作品紹介
【監督】藤井道人
【出演】横浜流星/吉岡里帆/森本慎太郎/山田杏奈/前田公輝/田島亮/遠藤雄弥/宮﨑優/森田甘路/西田尚美/山中崇/宇野祥平/駿河太郎/木野花/田中哲司/原日出子/松重豊/山田孝之/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 鏑木慶一は、凶悪な殺人事件の犯人として逮捕され、死刑判決を下される。護送中に脱走をした鏑木は、潜伏しながら自らの無実の証明とどうしてもしなければいけないことがあった。
ドラマ版の「正体」のほうが観やすいところが
藤井道人監督は、映画演出を学び、複数の短編映画を監督した後、伊坂幸太郎原作「オー!ファーザー」で長編デビューしています。2019年「新聞記者」で、日本アカデミー賞で作品賞を含む6部門を受賞し、高い評価のある監督です。2019年「新聞記者」で、日本アカデミー賞で作品賞を含む6部門を受賞し、高い評価のある監督です。
横浜流星は、2014年「烈車戦隊トッキュウジャー」で注目され、様々な作品に出演する男優です。2017年『キセキ-あの日のソビト-』では、「グリーンボーイズ」のメンバーとしてCDデビューもしており、今後の活躍が期待されています。
吉岡里帆は、京都太秦生まれで、芸術文化に親しみながら学生時代を過ごし、高校3年のときに、『天地明察』のエキストラ出演をします。その後、演劇の世界に触れ、18歳のときに、唐十郎の『吸血姫』で主人公を演じ、徐々に芸能の世界にのめり込み、2013年より女優としての活動を始めますが、グラビアやミュージックビデオの出演が多くなります。2015年『マンゴーと赤い車椅子』で映画デビューをし、テレビやドラマで活躍をしています。
主題歌は、ヨルシカ「太陽」となっています。
物語は、凶悪な殺人事件の犯人として逮捕された主人公が、隙をみて脱走をし、逃亡をしながらも自らの無実を証明するために潜伏しながら、さまざまな人と出会っていくストーリーです。
原作では、6つの章から成り立っており、潜伏先ごとに章が変わっていきます。
序盤から牢獄で口から血を流している鏑木が描かれ、さらに、ザッピングで鏑木のことを警察に話しているシーンが描かれ、鏑木自身は、救急車で搬送されます。
救急車の中で護衛を振り払い、救急車から逃亡をします。
鏑木自身は、様々な方法で各地に潜伏をし、名前も顔も変えてなにかの目的のために逃げ続けていきます。とある殺人事件を起こしたであろう犯人でもあり、死刑が確定していることになります。
本作は、死刑が確定している主人公がとある理由で逃亡をし、無罪を勝ち取っていく展開となっていきます。
日雇いの労働者が集まっているブラック企業なところで現場仕事をしているシーンとなり、そこで鏑木が働いており、そこでは、ベンゾーという名前で呼ばれ、密かになにかのために暮らしていますが、組織のブラックなところを法的に対抗したことで、ベンゾー自体は仲間から共感を得ます。
とはいえ、報道で連日脱獄犯のことが報じられていることで、鏑木は転々と仕事や風貌を変えて暮らしていきます。
日雇い労働者、ライター、老人ホームなど、転々としながらなにかのために逃げ延びていくわけですが、主人公に感情移入をすると、なかなか興味深く観られるのですが、本アクは2時間での映画となっているので、展開はちょっと早い感じがあります。
そういう点では、ドラマ版の「正体」のほうが観やすいところがあります。
映画版では、映像はきれいなのですが、ちょっと物語の内容に深さが足りないところもあり、あまりきれいにまとまっていなくても良いのではないかと思うところも感じます。
マンションに潜伏しているのがバレてから逃亡し、川に身投げするシーンは横浜にある黄金橋がロケ地となっています。
マンション名は「Rio Iidabashi」となっていますが、ロケ地は府中にあり、場所はここになります。マンションから飛び出した鏑木が角を曲がりますが、実際のロケ地では、ここに曲がり角はありません。絶妙なつなぎで、架空の場所をしっかりと撮影しています。
中盤で過去の事件と、現在の事件とで模倣犯が発生しますが、中盤以降でドラマ版と映画版でちょっと物語が変わってきます。
鏑木が起こしたであろう事件の真相が徐々にわかってくるところが本作のキーとなり、そのために今までの行動の点が結びついてくるが物語に引き込まれるところがあります。
死刑を宣告されながらも、脱走をして、とある目的のために行動をしていく鏑木と警察、そして、転々と鏑木がしている中で出会った人たちのつなぎ合わせが本作の不思議と引き込まれるところでもあります。
主人公に感情移入してしまうと非常に重い感情を抱いてしまいますが、むしろ、感情移入してしまうようなところも多く、その点でも、観ていくのが辛いところもあります。
まずは、WOWOWのドラマ版を観てから映画を観るということも良いかもしれません。なお、WOWOW版の監督は、中田秀夫監督ですが、ホラー要素のある作品ではありません。