作品紹介
【監督】上西雄大
【出演】徳竹未夏/古川藍/上西雄大/上田弘治/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 高橋は、焼肉屋を経営するバツイチのダメ男。ある日耳の聞こえない風俗嬢に出会い、恋に落ちていく。
サブスクで観る
気持ちの流れがすべてカラ回っているところからの人情物語
上西雄大監督は、2012年劇団テンアンツを発足し、劇団活動を始めます。2016年『10匹の蟻』で短編集オムニバス映画を制作し、以後、映画製作に取り組み、2017年『ひとくず』を制作し、劇場公開をします。2020年には全国ロードショーを開始し、以降も、映画監督や俳優として活躍しています。
徳竹未夏は、2003年よりパフォーマンス集団でさまざまなパフォーマンスをし、2014年「太秦ライムライト」で映画出演をし、2012年に10ANTSで活動を始め、上西雄大監督を始め、さまざまな作品で活躍しています。
物語は、焼肉屋を中心として、その店の店長やパートの人々、そこに通う客を織り交ぜながら人間模様を描いたストーリーです。
序盤から、焼肉屋で働く主人公が描かれますが、主人公は上西雄大監督自身となり、毎度ながらちょっと臆病そうなダメ男感で描かれます。
周辺のキャラクターはダメ人間が多いのですが、唯一しっかりもののシングルマザーの清美が本作の良心的なところにもなります。
「韓国ドラマすきやねん。韓流ドラマもな。」
シレッとギャグが盛り込まれていますが、本作は様々なキャラクターを通して描かれる作品でもあり、このノリを掴みつつ観るのが良いです。
なお、撮影している場所は、阪急蛍池駅と石橋阪大前駅の間付近です。モノレールと電車でだいたい場所がわかります。焼肉屋「さしの花」の店はこの場所になります。かなり昔からある店でもあり、上西雄大監督自身が経営している店でもあるようです。
主人公は監督自体が演じる高橋となりますが、実際にはシングルマザーの清美が主人公でもある印象が大きいです。
上西雄大監督作品は大阪で活動していることもあり、作品自体は大阪弁を使うところが多いですが、本作は、大阪の北摂地区にもなるので、あまりコテコテな大阪感のある場所とは異なります。
店長の高橋、シングルマザーの清美、主婦の弘美などが焼肉屋の店員となり、そこに映画研究部のイケメン大学生や耳の聞こえない風俗嬢などが登場してくる群像劇となります。
複数の物語が絡まりながらの話でもあり、ある程度人物関係を整理しながら観ると良いのですが、意外と丁寧に作られているので、人間関係を見失うことはないと思います。
上西監督作品の常連俳優が登場するところになりますが、これも上西監督主宰の演劇関連つながりでもあり、手作り感がありますが、上西雄大監督の初の長編映画ともなり、第4回賢島映画祭で評価を得ています。
登場人物の感情の方向性がほぼ一方通行でもあるので、気持ちの流れがすべてカラ回っているところからの人情物語となります。
非常にベタなところはありますが、本作の良さというところは、その愚直なところにも感じるところがあります。不器用なんですが、不器用だからこその粗削り感があります。
概ね、先が読めてしまう展開ではありますが、この愚直さも上西監督作品の良いところに思います。