【日本映画】「千夜、一夜(2022)」★★★★☆【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】主人公 登美⼦は、離島の港町に住む女性。夫の諭が30年前に姿を消したが、その帰りを登美⼦は待っていた。

綿密な調査により内容が出来上がっているので、生半可な演出ではないところはあります

久保田直監督は、ドキュメンタリー作品の制作をテレビ等で行い、世界の8人のドキュメンタリストに選出されるほどの評価を得ています。2014年「家路」で映画監督デビューをし、非常に高い評価を得ています。

田中裕子は、1979年『マー姉ちゃん』で俳優デビューをし、1981年『ええじゃないか』『北斎漫画』で高い評価を得ています。その後、1983年「おしん」で主演を演じています。ふわっとした外見ながら、しっかりと筋の通った役柄が多く、メリハリの効いた演技のできる女優です。

尾野真千子は、14歳のときに映画監督の目に止まり、1997年「萌の朱雀」で映画主演でデビューしています。その後、様々な作品で活躍しています。

物語は、30年前に失踪した夫を待ち続ける主人公は離島の港町に住んでいた。ある日、2年前に夫が失踪した女性と出会い、同じ境遇の彼女とともに、待ち続ける理由と失踪した理由を考えるストーリーです。

序盤から、漁船で漁業をしている風景が描かれます。そこから、登美⼦の生活が描かれますが、登美⼦は、魚の処理場で働きながら、夫の帰りを待っていることがわかります。

夫が失踪した人は他にも登場し、尾野真千子演じる田村奈美も同じ境遇の人として、若松登美⼦に会いに来ます。

失踪原因に、拉致されたということもあり、田村奈美も帰化した在日韓国人ということで、物語が進んでいきます。

ドキュメンタリーのような演出でもあり、社会問題でもある、拉致被害の話ともなるので、多少重い内容にも思いますが、作品的には難解な感じではなく、むしろ興味深くみられます。

「ちょっと散歩してくるね」

と言い残して失踪してしまうところには、ちょっと謎めいているところもあり、環境や境遇も含めて興味を持って観られるような作りになっています。

登美⼦と田村奈美の2人の視点で描かれていき、ドラマティックな展開ではないのですが、非常にドキュメンタリー風な感じで、失踪した夫の事情を調べていきます。

田村奈美は看護師として生活しているのですが、登美⼦も奈美も離婚しているわけではないので、ただ、夫の帰りを待っているというところになります。

登美⼦は、多くを語らないのですが、行動自体は、頑なに帰らぬ夫を待っているところがあり、ここに感情移入をしてしまいます。

拉致被害者については、詳しいことは説明されませんが、なんとなく観ていくうちに理解できてくるところはあります。

本作には、制作には8年の年月がかけられているそうで、綿密な調査により内容が出来上がっているので、生半可な演出ではないところはあります。

「30年は難しいかな」

帰らぬ夫を待っている件については、当人にしか理解できないのかもしれませんが、死んでしまった人ではなく、どこかで生きているという確信を持っているところに、言い表せない感情が読み取れます。

演出的にはドキュメンタリーな感じもしますが、映画としてもしっかり成立しているところもあり、社会問題も取り入れられている点で、気楽に観るというよりも、実際にこういうことがあり得るんじゃないかということを含んで観るとよい作品です。

予告編

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