作品紹介
【監督】三宅唱
【出演】松村北斗/上白石萌音/渋川清彦/芋生悠/藤間爽子/久保田磨希/足立智充/りょう/光石研/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 藤沢は、PMS(月経前症候群)で月に一度、イライラいが抑えられなくなる女性。ある日、会社の同僚の山添に怒りを爆発させてします。山添もまたパニック障害を抱えており、問題を解決していく中で、藤沢と山添は恋人でも友達でもない感情を抱きはじめる。
サブスクで観る
共感とは違うメッセージが観ている側に伝わってきます
三宅唱監督は北海道出身の映画監督で、初長編作は、『やくたたず』となります。その後、『Playback』で第22回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞し、活躍の場を広げています。
松村北斗は、2009年にジャニーズ事務所に入所し、ジャニーズJr.として活動をし、2012年『劇場版 私立バカレア高校』で映画デビューをしています。2015年テレビドラマ『私立バカレア高校』に出演したメンバーとともに、『SixTONES(ストーンズ)』を結成しています。2020年に『SixTONES』としてCDデビューをし、俳優や歌手として活動をしています。
上白石萌音は、小学校のころより鹿児島市のミュージカルスクールに通いはじめ、第7回『東宝「シンデレラ」オーディション』で審査員特別賞を受賞して、芸能界入をします。なお、このときのグランプリは妹の上白石萌歌が受賞しています。2011年NHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』でドラマデビューをし、2014年『舞妓はレディ』で映画初主演をしています。その後、テレビや映画の女優業をこなしつつ、歌手としても活躍しています。
原作は、 瀬尾まいこの2020年に発表された小説です。原作者自身もパニック障害の経験があるらしく、実体験をもとに創作された物語です。
物語は、PMS(月経前症候群)を抱える主人公が、会社の同僚と出会い、パニック障害を抱える同僚と、恋人でも友達でもない感情で共感していくストーリーです。
序盤から、主人公 藤沢がバス停で体調を悪くしている姿が描かれます。これは、PMS(月経前症候群)という症状で発生する問題であるという独白で描かれ、仕事もままならないようなことで、結局、仕事を辞めてしまいます。
PMS(月経前症候群)を抱えながらも生活していかなければならないということで、なんとか仕事を変えて生活していくというところとなり、そこから、5年後になります。
町の小さな科学工場で仕事をしていますが、そこでとある不思議な青年 山添と出会い、多少意思疎通ができないような印象を感じますが、ある日、炭酸飲料を開ける音が気になり、口論となります。
「わたしおかしいですか?おかしいこと言ってますか?」
藤沢の言っていることは突発的なところもあり、意外とこういう人はいるような気もします。病という点で片付けるのは良くないような気もしますが、実際、こういう症状で悩んでいる人はいるようです。
山添自体も、パニック障害というところがあり、徐々にその事情がわかってきますが、序盤は、藤沢の視点で描かれていくところもあり、山添の問題も2人の関係が描かれていくことでわかってきます。
ある日、山添が会社で過呼吸を起こしたことで、パニック障害があることがわかります。
「PMSとパニック障害って、こう、しんどさもそれに伴うものも、なんか全然違うけどなぁ」
藤沢と山添がお互いに何かしらの問題を抱えているというところもあり、2人の関係性は徐々に近づいてくる感じになります。
パニック障害についてもその現象や症状を説明するシーンがありますが、不自然な説明ではなく、サラッと説明されるところは良いです。
自宅で髪を切ろうとしていた山添のところに藤沢が訪ねてきたところで、髪を切ることを手伝うことになります。特に説明がないのですが、パニック障害であるので、自宅から出られないということで、自宅で髪を切ろうとしていたのでしょう。 不自然なように見えて実は設定的には矛盾は少ないように作られています。
物語の中心は山添と藤沢の2人の関係と、障害を持ちながら、普通の社会人生活として暮らしていく苦悩が描かれていきますが暗い物語ではありません。
「PMSだからって、言葉選ばなくてもいいとか、そういうのないっすよ」
徐々に冗談のようにお互いのことを話せていけるところに恋人でも友達でもないなにか不思議な関係性を感じます。
終盤、小学校の体育館でプラネタリウムを行うことで藤沢がアナウンスをしながら、彼女自身の救いが言葉として出てきます。
「この宇宙には変わらないものなんて存在しないのかもしれません。」
結果的に新しい生活に身を置いていきますが、2人の出会いによりお互いが救いの場所を見つけていくところに共感とは違うメッセージが観ている側に伝わってきます。
本人以外にはなかなか伝わらない障害ではありますが、わかりにくい問題を抱えていることをネガティブに描かずに優しい視点で物語を描いており、じんわりと感じ取ることができる何かがある作品です。