作品紹介
【監督】北野武
【出演】ビートたけし/西島秀俊/加瀬亮/中村獅童/木村祐一/浅野忠信/小林薫/岸部一徳/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】時代は戦国時代、織田家の家臣 荒木村重が謀反を起こし姿を消すが、織田信長はその捜索を家臣に命じる。その騒動の中で秀吉は、信長と光秀を陥れる策を講じていた。
サブスクで観る
時代背景や雰囲気で大幅に変わってしまうのかとも
北野武監督は、漫才師として「ツービート」で人気となり、数々のTV番組や司会業をしています。1989年「その男、凶暴につき」で、深作欣二監督が辞退をしたために、監督・主演で、映画監督デビューをしています。このときの脚本は、 野沢尚が手掛けています。2作目の『3-4X10月』では脚本も務め、北野武監督映画として人気となっていきます。1993年「ソナチネ」では非常に高い評価を得ており、バイク事故後の「キッズ・リターン」でも見事な作品として仕上げています。1996年『HANA-BI』で、第54回ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞を受賞し、『菊次郎の夏』『BROTHER』『座頭市』『アウトレイジ』など、暴力的な作品と作家性の強い作品を作り続けている監督です。
西島秀俊は、19歳の時にオーディションに合格し、芸能界入りをしています。1992年『はぐれ刑事純情派5』で俳優デビューをし、1994年『居酒屋ゆうれい』で映画初出演をしています。『あすなろ白書』等で人気はありましたが、事務所を移籍したために、1997年から2002年の5年間は民放のドラマには出演していません。その後、1999年『ニンゲン合格』で映画初主演をしており、第9回日本映画プロフェッショナル大賞・主演男優賞を受賞しています。その後、シリアスなものから、コミカルなものまで幅広作品で活躍しています。
本作は、2019年に北野武が発表した小説が原作となっています。北野武監督作品とは、「龍三と七人の子分たち」以来、約8年ぶりの新作でもあり、期待したいところです。
物語は、戦国時代が舞台。織田信長の「本能寺の変」を題材に、家臣や武将がそれぞれに野望を持ちながら天下を取ろうとしていくストーリーです。
序盤から、タイトル「首」が切られる演出があり、そこから時代背景が描かれます。
荒木村重の謀反により戦いが起き、徐々に追い詰められ、荒木村重は姿を消します。荒木村重のことで織田信長の家臣が集められ、処分についてを検討しますが、織田信長のキャラクター的にはなかなか良い感じな気もします。
「俺のために死ぬ気で働け」
加瀬亮の演じる織田信長については、いままでのありきたりな信長像とはちょっと異なり、ほぼ「やから」な感じがあり、ほぼヤクザな感じがあり、これもまた北野武映画感があります。
首を切られるシーンなどはかなり多く出てきますが、時代劇という性質上、今までの北野映画のバイオレンスから考えると、強烈な印象は、時代感を考えると、さほど衝撃的でもなく、ちょっと残念なところがあります。
現代劇での暴力性が北野映画の良さではあったので、緩急の付け方で考えると、時代劇自体の相性はあまり良くなかったような気もします。
コメディ要素も含んでいるような気もしますが、時代劇でのコメディも噛み合わせが悪い感じもあり、ちょっとテンポが悪いような気もします。
終盤、本能寺の変が起こるのですが、さほど派手に描かないところが北野映画らしいところで、「首」という題名の意味が徐々に浮かび上がってくるような感じもします。
ここからの展開は、多少北野映画らしくなってくるところはありますが、秀吉の登場シーンに関しては、ちょっと間抜け感もあり、ビートたけしと北野武の作家性の違いを感じてしまいます。
結局のところ、バイオレンスや静と動の緩急のうまい北野武映画ですが、現代劇での中では良かったとも思え、時代劇となると、時代背景や雰囲気で大幅に変わってしまうのかとも思います。「座頭市」がヒットした背景は時代劇の要素に振り切らなかったところがよかったのと、史実が存在してないところもでもあったのかもしれません。
決して暴力映画が観たいわけではないのですが、北野武映画のクールな演出や映像美という点では、ちょっとパワーダウンをしているように思います。