【監督】リューベン・オストルンド
【出演】ハリス・ディキンソン/チャールビ・ディーン・クリーク/ウディ・ハレルソン/ヴィッキ・ベルリン/ヘンリック・ドルシン/ズラッコ・ブリッチ/ジャン=クリストフ・フォリー/イリス・ベルベン/ドリー・デ・レオン/ズニー・メレス/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】女性モデルのヤヤと男性モデルのカールのカップルは、豪華客船のクルーズに同乗する。セレブリティが多く乗る豪華客船だったが、ある夜に船が難破し、無人島にたどり着く。
階級社会をブラック・コメディで描いた作品でもあり、非常に細かいところで、さまざまな布石を用意
リューベン・オストルンド監督は、映像制作会社でドキュメンタリーや短編を作り、2014年「フレンチアルプスで起きたこと」で、第67回カンヌ国際映画祭 ある視点審査員賞受賞を受賞しています。その後、2017年「ザ・スクエア 思いやりの聖域」で第70回カンヌ国際映画祭 パルム・ドール受賞 し、さらに、2022年「逆転のトライアングル」でも第75回カンヌ国際映画祭 パルム・ドール受賞 を受賞しています。2作連続でパルム・ドール受賞は、史上3人目となります。
ハリス・ディキンソンは、監督と俳優のどちらもこなしている俳優です。2017年「ブルックリンの片隅で」、2021年「キングスマン:ファースト・エージェント」などに出演しています。
物語は、主人公のモデルカップルが豪華客船に乗り込みセレブリティとともに船旅をするが、途中で船が難破し、無人島にたどり着く。そこでは、サバイバル能力の高いトイレ清掃員の女性がリーダーとなり、それぞれの立場が逆転していくストーリーです。
序盤からオーディションでモデルを選んでいるシーンから始まります。様々なモデルが登場し、そこからオープニング隣、物語は、ファッションショーのシーンになります。
本作は、超絶セレブの乗る豪華客船が、無人島に漂着してそこで、階級性やルッキズムが徐々に変わっていく展開です。
お金やファミにズムなどが描かれつつ、ヤヤとカールの関係が描かれ、そこでも、モデルとしての生き方に医師のあるヤヤの発言が見られます。
夕食のシーンでの演出は、序盤あらおもしろ演出となっており、常に画面の揺れがあり、船酔いをする演出に一役買っています。意外と気が付きにくいところですが、本作での下準備という点では、前半の豪華客船の流れが後半のシーンに効果的な演出になっています。
中盤以降は無人島での話となり、救助と限りある食料と、サバイバル能力が問われるところとなり、多くの人が何もできないという中、豪華客船でのトイレ係がその中でリーダーとなっていきます。
本作はブラックコメディのある社会の縮図を描いていった作品であり、階級社会の滑稽さを描いているところもありますが、ちょっと長い印象も持ちます。
無人島で切羽詰まっている中での状況ながら、ちらっととあるものが見える長回しのシーンはちょっと面白い演出にも思います。
タコを海から取ってくるということで、トイレ清掃員のアビゲイルが他の人と立場が変わってきます。当然、富豪たちがいるとはいえ、何もない無人島では、お金はなんの意味もなさないところがでてきます。
無人島の中での出来事は、前半の階級社会のヒエラルキーとは異なる流れとなりますが、終盤で、その関係も終わりに近づきます。
ラストシーンは、観ているがわに委ねる流れとなりますが、実際にはいつまでも優位な立場に居たい者と、この状況から脱出したいというジレンマで締めくくられていきます。
最後、階級社会をブラック・コメディで描いた作品でもあり、非常に細かいところで、さまざまな布石を用意されています。よくよく思うと、船が難破する原因も実は真相があるように思われますが、その点も注意深く見るとしっかりと描かれているような気もします。