作品紹介
【監督】まつむらしんご
【監督】吉田美月喜/常盤貴子/奥平大兼/前田敦子/佐藤緋美(HIMI)/石原理衣/三浦誠己/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 千夏は、母と2人で暮らす女子大生。念願の芸術大学に合格するも、健康診断で乳がんの疑いがあることを知る。
サブスクで観る
明確な答えはないです。
まつむらしんご監督は、第31回ぴあフィルムフェスティバルに入選し、2013年『ロマンス・ロード』で長編映画監督デビューをし、高い評価を得ています。その後、長編2作目『恋とさよならとハワイ』でも多くの映画賞で評価されており、今後も期待ができる監督です。
吉田美月喜は、2017年にスカウトされ、芸能界デビューをしています。2019年『町田くんの世界』で映画デビューをし、テレビドラマでも活躍をしています。2022年『メイヘムガールズ』では、映画初主演をしております。映画や舞台、テレビに活躍する女優です。
常盤貴子は、短大入学後、芸能事務所を訪ね、下積みを重ねて芸能活動を開始します。1993年ドラマ 『悪魔のKISS』の体当たり演技で話題となり、その後、1995年ドラマ『愛していると言ってくれ』や『ビューティフルライフ』などのテレビドラマで人気となります。1992年「いつだって今が始まり」で映画初出演をしています。テレビドラマで高い人気となりましたが、30歳頃を境に、映画や舞台の仕事にシフトしており、個性的な雰囲気を持ちながらも活動している女優です。
物語は、乳がんとなってしまった主人公が、病に対する悩みと日々の生活の中での出来事を描いたストーリーです。
序盤から、母の昭子と千夏が2人で暮らしている風景が描かれます。
常盤貴子は大阪弁を話す演技はたまにありますが、本作でも、大阪弁はほぼネイティブなイントネーションで演技しているのは良いです。
「などと意味不明な供述を繰り返しており」
存在感が絶妙な感じの前田敦子はちょいと良い感じです。設定的にはサブカルな人らしいのですが、本人自体も、女優を始めてから作品選びとしてはこだわりを感じ、意外とキャリアとしては良いのかと思います。
序盤までの千夏が学生生活をしながらも、楽しく過ごせているところは良い感じです。
乳がんの検診で医者に検査される気持ちは、当人でなければわからないところではありますが、男性の医者に触診されるのは多くの女性が気にするところかと思います。
「詮索すんのは勝手やけどね、人のこと、裏でペラペラ喋ったりするのはどうなん?」
千夏の母親の物語も並行して描かれており、本作の主人公は、母と娘の2人と考えると良いです。
思春期の女性の視点で描いていますが、決して重苦しくなく、コメディ要素もあるので、気軽に観ながらも、主人公の悩みやつらい現実が描かれています。この点については観る側も男女問わず、わかってもらいやすいところはあります。
本作ではロケ地が和歌山市となっており、港町ではありながら、大阪弁を使う地域でもあり、大阪弁というか関西弁のイントネーションについてもちょっとだけ講釈があります。
大学生となり、乳がんが発覚したことで、治療をしなくてはいけないという点では、当人にとっては書いている小説と同じように、胸が大変ではあります。深い恋愛をしたこともなく、これから様々なことが待っている千夏としては、思い悩むこともわかり、さらに言えば、女手ひとつで育ててきた昭子も余計に気にしてしまうのも無理はないです。
「おっぱいなくなったら、もう、恋とか無理なんかな。」
「この胸は誰にも触られることなくなくなってしまうのかな。胸を触られるってどんなかんじなのかな」
千夏の視点が吐露されることで、乳がんの可能性のある女性の苦しみや恐れがなんとなく伝わるのかと思います。
「好きな人に何も遠慮せずに好きって言えるんでしょ。」
自暴自棄になっていく千夏の悲しみはすごくよくわかります。
「まともにおっぱいの話ができるくらいおとなになれ」
この言葉もわからなくはないです。それぞれの登場人物は、自分の立場から世の中を映しているところがあり、他人から見た自分という点では狭い世界だなぁというところに気付かされます。
ター坊のアンケートには、不器用な感じもしますが、とても相手の言葉を読み取った行動なのかと思います。
「踊れわたしの胸、高鳴れわたしの胸、騒げわたしの胸」
明確な答えはないです。ないからこそ、このまとめ方と進んでいく生活と、エンディング曲の「それでも明日は」という曲があるのかと思います。