【監督】荻上直子
【出演】松山ケンイチ／ムロツヨシ／満島ひかり／吉岡秀隆／江口のりこ／柄本佑／田中美佐子／緒形直人／黒田大輔／知久寿焼／
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 山田は、北陸の小さな町で塩辛工場の仕事に就き、古い安アパート「ハイツムコリッタ」で生活を始める。ひっそりと暮らそうとしていたところに、周囲の住人と関わりが始まり、住人と交流が始まる。
今すぐにはわからなくとも、その時間をかけたことにより理解できることに意味がある、そんな作品
・荻上直子監督は、1994年に渡米し、映画を学び、帰国後、2001年『星ノくん・夢ノくん』で自主映画を制作しています。その後、2003年『バーバー吉野』で長編映画監督デビューをし、2006年『かもめ食堂』で高い評価を得ています。出産を経て、2017年『彼らが本気で編むときは、』で映画監督に復帰をし、以降、コンスタントに作品を発表しています。
・松山ケンイチは、2001年にオーディションに合格しモデルデビューをしています。その後、2002年『ごくせん（第1シリーズ）』でテレビドラマデビューをし、2003年『アカルイミライ』で映画初出演をしています。役作りにこだわりのある俳優です。
・ムロツヨシは、大学時代に舞台でみた段田安則の演技に感銘を受け、役者を志し、劇団で舞台活動を始めます。2005年『サマータイムマシン・ブルース』で映画に初出演し、その後、テレビや映画、舞台で活躍しています。芸名のムロツヨシに姓名の区別はないとのことです。コント番組などにも出演し、器用なところもあり、「勇者ヨシヒコシリーズ」でも印象ある役をこなしています。2021年「マイ・ダディ」では、映画初主演をしており、今後のさらなる活躍が期待できる俳優です。
・「ムコリッタ（牟呼栗多）」とは、仏教の時間の単位を示しており、「1/30日＝48分」という時間となります。この時間にささやかな幸せを見出すという意味があります。
・原作は、2019年に荻上直子監督が書いた小説です。
・なお、制作に「竹内力」がいますが、多分、同名の別人なのかも、と一瞬思いますが、制作会社が「RIKIプロジェクト」でもあり、あの「竹内力」で間違いないです。
・物語は、小さな町の工場に仕事を見つけた主人公が、安アパートに住みながらひっそりと暮らそうとしていたところ、住人たちとの関わりが始まり、徐々に主人公の状況が変わっていくストーリーです。
・序盤から、塩辛工場で働く主人公が描かれ、その工場で紹介されたアパートで住むようになります。
・細かいことは描かれませんが、どうやら、囚役後の社会復帰として多くの人が働いているというようなことが暗に描かれているような演出です。
・主人公の山田のことは素性が描かれないので、その点に本作のストーリーが気になるような流れに思います。
・断片的に山田の境遇が描かれていますが、特にウジが湧いているのはなかなかキツイです。
・「お礼なら、風呂貸してよ」
・色々なキャラクターが「ハイツムコリッタ」にいますが、その境遇もそれぞれにあり、管理人の南にもなにか事情がありそうな雰囲気もあります。
・その事情等は、セリフではなく、ちょっとしたカットで示されているところもあります。
・「ごはんってさ、一人で食べるより、誰かと食べたほうが美味しいのよ」
・ムロツヨシ自身が演じる島田のキャラクターが妙に図々しいところもありますが、このキャラクターの存在価値は本作に非常に重要です。
・山田が公衆電話からかけている電話先は見ているうちにわかります。特に詳しい説明がないのですが、その意味は意外と重要でもあります。
・この点については、ミスリードも誘っているようなところもありますが、本作はあえて説明を削ぎ落としているところもあるので、その点が興味深いです。
・吉岡秀隆の墓石の営業マンはどことなく不思議な印象がありますが、途中でその存在が実はなにか意味があるように思えます。
・本作は、どこか死の匂いが常につきまとっているところもあり、そこに意味があります。
・その匂いは別に悲観的なところでもなく、生きていく上での疑問と捉えるので、良いかと思います。
・今すぐにはわからなくとも、その時間をかけたことにより理解できることに意味がある、そんな作品です。
