【監督】清水康彦
【出演】リリー・フランキー/中村羽叶/吉田照美/岡田ロビン翔子/黄栄珠/福田信昭/神野三鈴/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 健一は、息子 映吉を心臓病で亡くし、妻も去ってしまったことで、孤独に暮らす男性。そんな中、年に一度のごちそうとしてカレーを作り始める。
終盤での電話の一人芝居は秀逸
・清水康彦監督は、広告やミュージックビデオなどのプランナーやディレクターとして活躍し、2019年『MANRIKI』で長編映画デビューをし、様々な映画賞を受賞しています。
・リリー・フランキーは、イラストやデザインなどの作家活動のみならず、文筆、俳優など様々なジャンルで活動し、2006年「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」では、映画化もされ、作家としての才能も発揮しながらも、俳優としても、数々の賞を受賞し、多彩な才能を発揮しています。芸名自体は、「薔薇と百合(ローズ&リリー)みたい」という学生時代の名付けから、ボーイ・ジョージのファンと言うことから、男性でも女性でもなく、国籍もわからないような理由も込めて、リリー・フランキーとしているそうです。
・もともとは、「劇団スーパー・エキセントリック・シアター」の戯曲となります。
・物語は、とある中年男性がカレーを作る内容です。そのカレーは妻の誕生日に作るカレーで、作ってから3日後のカレーが好きな妻のために3日前からカレーを作り始めます。そのことで、孤独な男性に小さな奇跡が起こり始めるストーリーです。
・序盤より、息子の映像から始まり、そこから雨の日に自宅に帰ってくる主人公が描かれます。
・本作はほとんどが一人芝居ともなるので、リリー・フランキーの部屋の中での行動だけが淡々と描かれます。
・突然の停電と、小さなアパートの一室での生活となりますが、突如カレーを作り始めます。
・非常に美味しそうな手作りカレーでもあり、このカレーは食べてみたい気がします。
・部屋の中とラジオ放送だけで作品が描かれた後、タイトルとなります。
・淡々とした展開でもあり、その中で流れていくラジオ放送は、本作のポイントになっています。
・全体的に夜のシーンと停電の発生もあり、画面は暗いのですが、アパートの一室で一人でなにかをしているところに意味がある作品です。
・細かい説明がないところが特長なので、説明不足と感じてしまいますが、本作の意図を考えると、この演出だからこそ伝わることがあります。
・明け方となりカレーを食べるわけですが、この虚無感と喪失感は、すでにこの夜明けで洗い流されているようでもあり、失踪してしまった妻と、幼くしてなくしてしまった息子の間で、何を思って健一が暮らしているのかがセリフや説明を使わずに伝えています。
・52分という時間で、アパートの一室で描かれる男の物語には、なんともいい表せられない感情が湧き出る感じがします。
・終盤での電話の一人芝居は秀逸です。