【監督】ラナ・ウォシャウスキー
【出演】キアヌ・リーブス/キャリー=アン・モス/ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世/ニール・パトリック・ハリス/ジェイダ・ピンケット・スミス/ジェシカ・ヘンウィック/ジョナサン・グロフ/ジェイダ・ピンケット・スミス/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 トーマス・A・アンダーソンは、セラピストから青いカプセルをもらい処方をしながら生活をしていたが、ある日、トリニティという女性と出会う。彼女とは再会したことになるが、お互いのことがわからなかった。モーフィアスという男と出会い、そこで赤いカプセルをもらい、マトリックスの世界に入り込んでいく・・・。
「アクション=マトリックス」という見方よりも、「哲学=マトリックス」という見せ方が今回の続編の立ち位置
・ラナ・ウォシャウスキー監督は、ローレンス・ウォシャウスキーとしてアンドリュー・ポール・ウォシャウスキーの兄弟として生まれ、『暗殺者』の脚本を書き、映画化をされています。1996年「バウンド」で映画監督デビューをし、1999年に「マトリックス」で大ヒットをします。その後、マトリックス3部作を手掛けたあとも、映画製作を続け、2008年にトランスジェンダーとして性別適合手術をし、ラナ・ウォシャウスキーと名乗っています。弟のアンディ・ウォシャウスキーも、リリー・ウォシャウスキーとしてトランスジェンダーとして性別適合手術をし、ウォシャウスキー兄弟から、ウォシャウスキー姉妹へと変わっています。
・本作では、コンビを解消し、ラナ・ウォシャウスキー 単独監督をしています。
・キアヌリーブスは、1985年「Letting Go」でテレビ映画に出演し、その後、1989年「ビルとテッドの大冒険」がヒットし、1991年『マイ・プライベート・アイダホ』では、親友のリヴァー・フェニックスとともに出演しています。1994年「スピード」のヒットで、世界的に知られるようになり、1999年「マトリックス」もヒットをし、再ブレイクをして、不動の人気を得ています。さらに、『ジョン・ウィック』でも、当たり役を演じ、幾度もブレイクをしています。2014年『ファイティング・タイガー』では、出演をしながら、映画監督デビューをしています。1991年には、グランジ・ロック・バンドの「ドッグスター」でも活動していましたが、2002年に活動を停止しています。身なりに頓着がないようにも見られ、公園や電車で見かけられることもあり、有名人ながらも、一般人のような行動をしていることがあります。
・物語は、前作3部作で完結したストーリーとはちょっと異なる感じでありながら、主人公のトーマス・A・アンダーソンは、マトリックスというゲームを開発し、何かと違う世界をすごしながら、世界を救った救世主として、再びマトリックスと対峙していくストーリーです。
・序盤は、マトリックス1作目と同様のシークエンスが描かれながら、その傍観者も登場し、同じような世界でありながら、前作とは全く異なる展開を繰り広げていきます。
・前作3部作を観ていること前提の展開となっているので、マトリックスやエーゲンとの概念は理解しておくほうが良いです。
・モーフィアスを演じた俳優が本作では、ローレンス・フィッシュバーンではなく別の俳優が演じているので、この部分をしっかり置き換えて観る必要があります。
・この部分がちょっとめんどくさいのですが、全3部作を再構築した物語ではあり、アクション映画という視点というよりも、マトリックスのもう一つの魅力である「哲学的」なところが、本作ではフィーチャーされています。
・エージェント・スミスも完全に敵ではなく、この部分もしっかりと観ておく必要があります。
・序盤では、サブリミナルな演出もあるので、このヒントをよく観ておくほうがよいです。
・トーマス・A・アンダーソンがネオであるということは前作の引き続きではありますが、中盤までは、この作品の概念と本作をなぜ制作したのかというところをゲーム制作会社という視点から、マトリックスという作品を分析しています。
・これは、劇中劇的な点でもあり、ちょっと不思議な構造になります。でも、マトリックスとは「いままで普通と思っていたことが実は疑って考える必要もある」という要素も含まれており、新しいゲームの開発のミーティングも、実は、本作が作られた経緯をなんとなく説明しているような気もします。
・ネオの勤める会社の社長も、スミスとなっているところにパラレルワールド感を感じますが、この真実と虚構の狭間のわかりにくいところが、その魅力にもなります。
・実際には非常にわかりやすい構造ではありますが、初回鑑賞の際には話していることがちょっと理解できないかもしれません。
・2022年1月よりオンライン配信が行われており、劇場公開から1ヶ月の期間で配信が行われることは稀に思いますが、個人的には「見返す必要がありそうな作品」であれば、配信で観たほうがしっかりと物語を理解できるのかと思います。
・アクション要素は、抑えめに作られていますが、中盤以降は、やはりアクションシーンもあり、本作のキーとなる人物も徐々にわかってきます。
・続編を作るという点では、今までの作品のシリーズ化の手法とはちょっと異なっており、どちらかといえば、「ターミネーター」のような続編の作り方にも思います。
・前三部作では、何度か救世主が現れるも失敗をし、人類は滅亡をたどっていることがわかり、それは、機械対人類の戦いの中に必要なシナリオとして、救世主が現れるということでした。
・本作では、その救世主云々というところもテーマにはありますが、どちらかといえば、マトリックスの世界構造のおさらいと考えてもよく、そこから先の世界の可能性を提示している作品とも言えます。
・「アクション=マトリックス」という見方よりも、「哲学=マトリックス」という見せ方が今回の続編の立ち位置にはなるかと思います。
・ウォシャウスキー姉妹が今作では、ラナ・ウォシャウスキーの単独監督という点でも、そもそも、続編をすべきだったのかどうかという点を表しているようにも思えます。
・マトリックス3部作を鑑賞が前提となるので、それを踏まえて鑑賞すると、本作の緻密な構造がしっかり理解できるのかと思います。