作品紹介
【監督】石川慶
【出演】芳根京子/寺島しのぶ/岡田将生/清水くるみ/井之脇海/中川翼/中村ゆり/倍賞千恵子/風吹ジュン/小林薫/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】そう遠くない近未来の世界。主人公 リナは放浪生活の末、エマと出会う。最愛の人を亡くした人のために遺体を保存する技術「ボディワークス」という仕事に就く。エマの弟の天音は、不老不死の研究を実らせ、リナと天音は不老不死となり永遠の命を得る。
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近未来感のある作品ですが、生命ということの概念をちょっと考えてしまう作品
石川慶監督は、大学では物理を学んだあと、映画監督を目指し、ポーランドに留学をし、演出を学んでいます。帰国後は、ドキュメンタリーやCMを制作し、2017年『愚行録』で長編映画デビューをしています。
芳根京子は、2013年『ラスト シンデレラ』で女優デビューをし、2014年「物置のピアノ」で映画初出演にして初主演しています。
寺島しのぶは、2000年『シベリア超特急2』で映画デビューをしています。父が七代目尾上菊五郎、母が富司純子、弟に五代目尾上菊之助がいます。2003年『赤目四十八瀧心中未遂』『ヴァイブレータ』で注目がされ、各映画賞を受賞しています。『Tokyo Tower』『愛の流刑地』『キャタピラー』など、数多くの話題作に出演し、印象ある演技で存在感のある女優です。
岡田将生は、中学2年のときに原宿でスカウトされ、一旦は断るも、のちに芸能事務所に所属し、デビューしています。その後、2007年「アヒルと鴨のコインロッカー」で映画デビューをし、着々とキャリアを重ねています。2014年には、蜷川幸雄演出による舞台にも出演し、幅広い活動をしています。
原作は、SF作家ケン・リュウの短編小説「円弧(アーク)」となっています。
物語は、近未来の世界で、主人公が「ボディワークス」という仕事をし、そこで出会った科学者とともに、不老不死となっていくストーリーです。
序盤は、リナが放浪の末に大手化粧品会で「ボディワークス」という仕事に就きます。
近未来の設定でもあり、多少専門的な造語が出てきますが、理解できなくても、なんとかなります。
多くは、死生観を描いているところであり、「ボディワークス」という不思議な技術が妙に特長的です。
前半は主に、「ボディワークス」のなんたるかと、不老不死についての考えや理想が描かれます。
後半が一転して、限りある生命について、考えてしまうところがあります。
不老不死になる前、不老不死となったあとでは、演出が異なり、不老不死の状態はモノクロームの映像で描かれます。
多分これには意図的なところがあり、不老不死であることの退廃感を非常に感じます。
「君はもう、何も急がなくていい、時間ならいくらでもある」
不老不死となった状態で、娘が登場した時点で、不老不死にはかなり異様さを感じてしまうところがあります。
映画の内容とは違う一般論になりますが、子供としての視点と親の視点を思うと、子供が成長する姿は見たいところもあり、子供は親がいつまでも親でいるわけではないというところも考えられます。
自分自身で見れば、不老不死という点では夢にも思うところではありますが、自分自身の親、子、孫ということを考えると、その年齢を重ねるという流れに乗るべきところは思います。
「足音よ」
経験によりひとが感じる時間の長さが変わってくると言われており、10代の時間の流れと、60代の時間の流れは感覚的に変わってしまうところはあります。
そんな概念的なところが多く込められた作品ですが、もうちょっとメリハリがあっても良かった気もします。
プラスティネーションは、独特な世界観を象徴する印象がありましたが、かと言って、作品全体でのメッセージ性とはちょっとズレてしまうところはあります。
近未来感のある作品ですが、生命ということの概念をちょっと考えてしまう作品ではあります。