作品紹介
【監督】玉田真也
【原作】又吉直樹
【出演】渡辺大知/奈緒/山科圭太/野田慈伸/前原瑞樹/萩原みのり/後藤淳平/福徳秀介/たくませいこ/児玉智洋/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】加藤と美帆は、お互い友達同士ながらも、とても気が合い、友達以上恋人未満の関係を続けていたが、加藤は徐々に美帆への気持ちを抑えられなくなってくる。
サブスクで観る
会話で成り立っている作品ですが、そんな難しいことを話しているわけではなく、気軽にみて良い作品ですが、人によっては、かなり刺さる作品かもしれません
玉田真也監督は、玉田企画主宰し、作・演出を手掛けています。2020年のテレビドラマ「JOKER × FACE」で第8回市川森一脚本賞受賞を受賞しています。
渡辺大知は、2007年高校在学中にロックバンド「黒猫チェルシー」を結成し、活動をしています。2018年にバンド活動は休止しています。2009年『色即ぜねれいしょん』で映画初出演初主演をし、その後、2011年NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』に出演しています。
奈緒は、高校1年のときに地元福岡でスカウトされ、芸能活動を開始しています。2013年にテレビドラマに初出演し、2016年『雨女』で映画初出演をしています。2017年までは、本田なおで活動をしていましたが、姓名判断より本名の「奈緒」と芸名を変更して以来、仕事が増えたとのことです。2019年『のの湯』では、テレビドラマ初主演を努めています。尊敬する女優は田中裕子。
本作は、別冊カドカワ 【総力特集】又吉直樹での一編「僕の好きな女の子」 が原作です。
物語は、友達以上恋人未満の男女がお互いにそのままの並行線をたどる中、徐々にその間に変化が起こってくるストーリーです。
序盤から、SNSの会話から、2人が待ち合わせの駅まで移動をするシーンから始まりますが、このシーンから、タイトルが出るまでの流れは、注意して観ておくことをおすすめします。
特に、コンビニの袋になにが入っているかはポイントです。
井の頭公園での風景が描かれますが、特にそのロケーションがわからなくても、作品にはなんの支障もないです。ただし、公園にいる人や公園の規模感を考えると、井の頭公園を知らない人にはピンとこない気もします。
「あなたの恋人になりたい」
加藤の目線で描かれる流れでもあり、美帆がどういうことを思って行動しているのかは、明確にはなっていないです。だから、本作の魅力があるところでもあります。
「あなたはね、飛び出す映像を作っているんだけど、その人は3Dのメガネを持っていないから、飛び出しているようには見えないんだよ。」
居酒屋のシーンでこのような会話がでてきますが、この例えは見事です。
「加藤さんってあれでしょ、めんどくさいひとでしょ」
結局、差し入れを持ち帰るというところには、加藤の人柄が現れており、この人柄が本作の重要なポイントでもあります。
要所要所、明確にセリフや行動で分からせるような演出ではなく、さりげない仕草や行動と、又吉直樹の文章構成が本作の一筋縄ではないところになります。
加藤のダッフルコートのうすっぺらい感はとても気になります。
中盤で、本作の骨格が急に見えるような気がします。
それは加藤視点から物語ではあるものの、構成している映像が、一つの仕掛けとなっているのがなんとなく布石になっています。
なお、この中盤のシーンはワンカットだと思いますが、7分ほどの長さがあり、カットが変わるタイミングは、本作の重要なところかと思います。
「この間ね、付き合うことになった」
加藤は結局、美帆とどうしたいのかというところに、明確な答えは持っているのに、それを踏み出してしまうことで、失うものもあることを知っているからなのかもしれません。
「君は、ぼくのことを好きにならない」
ここで、加藤は悟っているところは感じますが、果たして、その考えが「勝手な思い込み」なのか、それとも、「本当にそうなのか」は、悩むべきところだったのかと思います。
「そりゃ、言わないよ加藤さんからは。」
このシーンの演出はちょっと見事で、会話している2人がベンチに座りながらも、背中からのショットとなっており、会話している2人の顔が見えないところにポイントがあります。
そして、遠目で美帆が泣いてしまっているところを見てしまうところに、変わってしまったなにかが込められているように思います。
ラストシーンでは、時間軸と演出が見事でもあり、映像演出というよりも、又吉直樹の作品のトリックなのかと思います。
なにより、美帆という人物は見ていると、とてもカワイイという点と、この言動には悪意はないとしても、この流れに乗ってしまっても、仕方ないなぁとは思います。
気の合う人と気持ちが通じ合うというのはこういうことなのかなぁとは思いますが、それは、その相手の一面でもあり、他の面が見えないのが、常にあることで、それが、この終盤での加藤のやりどころのない気持ちをそれでも続けているところなのかなぁと思います。
会話で成り立っている作品ですが、そんな難しいことを話しているわけではなく、気軽にみて良い作品ですが、人によっては、かなり刺さる作品かもしれません。