【監督】ダーヴィト・ヴネント
【出演】オリヴァー・マスッチ/ファビアン・ブッシュ/カッチャ・リーマン/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 アドルフ・ヒトラーが何故か現代に蘇る。その状況をみて、周囲の人はモノマネかコスプレと思い込むが、実際には本物のヒトラーであり、圧倒的な演説力で、周囲は芸人とみていたが・・・。
予備知識と感情移入のよりどころを見極めた絶妙なスタンスで鑑賞をオススメする映画
ダーヴィト・ヴネント監督は、ドイツ ゲルゼンキルヘン出身の監督で、2000年『Hanging On』で監督デビューをし、ドイツで才気あふれる監督として評価されています。
オリヴァー・マスッチは、舞台俳優として活躍後、フロリアン・バクスマイヤー監督作品の常連となり、多数の映画に出演しています。
物語は、タイムスリップしてきたヒトラーがジェネレーションギャップを感じながらも、周囲の反応を意に介せず、昔のように演説や思想を持って、人々を魅了していくコメディ映画です。
序盤から唐突に現代に現れたヒトラーが、現代の社会に迷い込んでいるところが描かれます。
このあたりは、ジェネレーションギャップもあり、コメディ要素があるのですが、どこまでも本人であるヒトラーには、笑いを取っているわけではなく、どこまでも真面目にしているところがあります。
ここにジェネレーションギャップならぬ、オーディエンスギャップがあり、いまいち映画の世界観に入り込みにくいところがあります。
確かに本人からすれば、至極常識的なところなのでしょうが、他の登場人物にはコントに見えてしまうところもあり、鑑賞者からは、感情移入の置き所を見失ってしまいます。
ここ部分がちょっと残念なところであり、中盤くらいまでは、映画における鑑賞者の立ち位置よって、映画の世界観に没入できないようなところがあります。
このペースで後半まで見続けてしまうと、最終的にこの作品のコメディ感を追いきれなくなってしまうので、面白さが半減してしまいます。
気をつけたいところはやはりナチスとヒトラーの歴史的に行ったことであり、多少なりともそのことについて知っておく必要があります。
逆にこの点を押さえておくことで、コメディやパロディが要所要所に仕掛けられているので、この映画の面白さが理解しやすくなります。
中盤以降で、この要素を利用したマスコミ戦略が出てきますが、この部分まで来れば、この作品が緻密に計算されたコメディだと理解しやすくなります。
終盤はちょっと急ぎ足で畳み掛ける感じもあり、またシリアスな展開となってきますので、気が緩んだところにスコンとこの作品のテーマが落とし込まれてきます。
前半コメディ、後半シリアスとわかりやすい区切りではありますが、予備知識と感情移入のよりどころを見極めた絶妙なスタンスで鑑賞をオススメする映画です。