【監督】ロバート・アルトマン
【出演】アンディ・マクダウェル/ブルース・デイヴィソン/ジャック・レモン/ジュリアン・ムーア/マシュー・モディーン/アン・アーチャー/フレッド・ウォード/ジェニファー・ジェイソン・リー/クリス・ペン/リリ・テイラー/ロバート・ダウニー・Jr/マデリーン・ストー/ティム・ロビンス/リリー・トムリン/トム・ウェイツ/バック・ヘンリー/フランシス・マクドーマンド/ピーター・ギャラガー/ライル・ラヴェット/ロリ・シンガー/
【個人的評価】★★★★★
【あらすじ】カルフォルニアのとある町で描かれる様々な人々の生活とそのコミュニティを描いた群像劇です。
意味のないことに意味がある。そういった文脈に沿った作品
ロバート・アルトマン監督は、第二次世界大戦時、18歳にしてアメリカ陸軍航空軍に入隊し、戦争を体験しています。その後、CMの仕事を始め、映像について学び、1957年『The Delinquents(不良少年)』で長編映画映画監督デビューをします。1970年にブラック・コメディ『M★A★S★H マッシュ』が第23回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、「ロンググッドバイ」「ナッシュビル」「プレタポルテ」「ショートカッツ」「ゴスフォードパーク」等多数名作を残し、2006年81歳で他界しています。
本作はレイモンド・カーヴァーの9篇の短編小説と「レモネード」という詩から引用し、1つの作品として構成した作品です。なので、複数に物語が並行して展開していき、淡々とした印象を受けるところがあります。
「隣人」「ダイエット騒動」「ビタミン」「頼むから静かにしてくれ」「足もとに流れる深い川」「ささやかだけれど、役にたつこと」「ジェリーとモリーとサム」「収集」「出かけるって女たちに言ってくるよ」の9編の短編小説と詩「レモネード」から構成されています。
全体的な物語は、すべての状況を整理しながら観るとかなり疲れますが、この映画の本質は各物語には集約されておらず、最終的なまとめに行き着く経緯にあると思います。
日常では様々なことが起こり、人との関係性やコミュニティという点では、その状況で日々を過ごしているのかもしれません。
その日々の出来事は、他愛のないことではありますが、その他愛のないことの先に真実があるようにも思います。
その真実については明確な説明がないことから、映画の読解力が必要になってきます。
真実をもとに考えれば、緻密な物語構成となっており、長時間に渡る生活の描写には明確な意図があります。
最終的には、終盤の出来事に集約されますが、重要なのはその後の行動でもあります。
187分という上映時間でかなり長いですが、長いことに意味があります。
観賞後の反芻としては、観た人の判断に委ねられるわけですが、意味のないことに意味がある。そういった文脈に沿った作品でもありますので、気軽に観るわけにはいかないのですが、全体を俯瞰した形でこの映画の構成を分析すれば、本作の痛烈なメッセージが見え隠れするのかと思います。