【監督】住田崇
【原作】バカリズム
【出演】バカリズム/夏帆/臼田あさ美/佐藤玲/山田真歩/三浦透子/シム・ウンギョン/石橋菜津美/志田未来/坂井真紀/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公の私は、みさと銀行に勤める5年目のOL。私を通じて綴られたブログの記事を元に作られた内容で、銀行の更衣室や食堂、仕事終わりの食事会など、働く女性の日常を描いています。
住田崇監督は、テレビドラマやバラエティ番組を手掛けてきており、バカリズムの関わっている作品が多い。本作は、劇場用映画初監督作品となります。
バカリズムは、1995年から2005年まで活動していたお笑いコンビ名ではありますが、現在は、コンビを解消をして、コンビ名を引き継いでいます。ソロ芸人となった以降は、フリップ芸や大喜利で人気を博しています。
夏帆は、小学校の頃にスカウトされ、CMあまりデビューをし、その後テレビやドラマに出演をし、2007年『天然コケッコー』で演技が評価され、数々の作品に出演を重ねている女優です。
物語は、 みさと銀行に勤める入行5年目のOL、升野が綴ったブログに沿って日常を振り返るストーリーです。
序盤から、女装メイクをしていないバカリズムが私となり、OLの日常を演じ始めます。
服装は女性ですが、メイクはしていないので違和感がありますが、すぐに観慣れます。
本編をよくよく観ると、これは「あるある」映画であり、明確な演出がなくても、成立する要素があるので、全編がコントということで考えると、とてもしっくりします。
仕事は、銀行員ということですが、地方銀行ということなので、OLと言われて一瞬しっくり来ないのですが、そもそも一般企業のOLというよりも、制服は規則などを考えると銀行員という落とし所は納得できます。
物語の流れは、OLの日常を描いたものですが、主人公「私」の独白が特徴的ではあり、この作品の構造を明確にしているところになります。
電源タップに繋がれた機器を見ているといろいろとモヤモヤするところはあります。
正直、登場人物の裏表が激しいという点もあり、観ていて気分の悪い点もあります。
この作品の特異なところは、「女性の敵は女性」という要素をさも、観ている側には感じさせず、女性の共感を受けるところなのかもしれません。
自らのことを指摘されているかもしれないのに、そのようには受け取れない点が、ポイントになります。
何故かということを考えれば、非常に単純で、主人公 私をバカリズムが演じているからこそ、主人公に感情移入できないために、カタルシスの感じ方に歪みがあるところかと思います。
バカリズム自体も、コメディと言う点で描かれているので、意外とブラックジョーク的な要素がありますが、そういう点には気付かせない巧みさがあります。
なお、主人公私としては、お笑いを論理的に分析しているからこそ、理詰めで設計されているわけで、周囲のOLとしては、むしろその真逆である印象もあるので、その思考の違いから、観る側の想像力も操作されている印象があります。
これは終盤の結婚報告を演出するというところが、理詰めでの発想視点と、流れという空気感の感情的なところでの、逆の視点があるわけで、この作品の構造的なところがあるかと思います。
決してつまらない作品ではないのですが、筆者は、本編を見ている間、まったく笑わなかったのは事実です。
それは、「あるある」的要素の対象が、一般的なOLを指しているところでもあり、明確な対象は示されていませんが、対象が示されていないからこそ、自らのことを指摘されていると受け取れるわけでは、すべてを受け入れがたいところに感じさせてしまうところがあるからです。
本作は、銀行勤めのOLのフリをしてブログに記事を書いていたことになります。
この設定はしっかりと回収され、本作の主題ともなってきますが、実際そのメッセージについては、重要なところでもないのかもしれません。
バカリズム自体は、そのメッセージ性も含んで本作を制作しているかと思いますが、そのメッセージ自体を真面目に考えてしまうと、本作は楽しめないのかもしれません。
気軽にOLあるある物語として観る分には、むしろバカリズムのコントではあるので、その部分だけを愉しめばよいのかと思う作品です。