【監督】森岡利行
【出演】和田瞳/水野勝/川上奈々美/重松隆志/森田亜紀/円谷優希/山田奈保/赤羽一馬/酒井健太郎/那波隆史/柴田明良/お宮の松/中西良太/三浦浩一/木下ほうか/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 茂は、運送会社のトラブルで借金を抱えた末に、大阪の飛田新地へとやってくる。そこで一美という女性と出会い、女性の心をケアする女師の道をえらぶ。
この独特な地域の社会を描いたという点では、良いのかもしれません
森岡利行監督は、俳優業を経て、1993年に劇団「ストレイドッグ」を結成し、2000年「クラヤミノレクイエム」で初監督をしています。その後、2008年「子猫の涙」で第20回東京国際映画祭「日本映画 ある視点」部門で特別賞を受賞し、脚本や映画監督、舞台演出などで活躍しています。
和田瞳は、子役としてドラマにも出演していたことがあり、大学時代には「明治ガールズコレクション2015」のファイナリストとなっています。2016年にスマイル海賊団メンバーとなっており、俳優としての活躍もしてます。温泉ソムリエという資格を持っています。
水野勝は、2010年にスカウトされ、BOYS AND MENに加入します。徐々に人気を集めリーダーに就任し、派生ユニットYanKee5のリーダーにもなっています。俳優としても活躍しており、2016年『復讐したい』で主演を努めています。
物語は、社会的に行き詰まってしまった主人公と、遊郭の風俗嬢が出会い、その女師となりながらも、その間に別の感情が芽生えていくストーリーです。
序盤から、とあるバーで女師の説明をするところからはじまります。その時点からの回想の物語となりますが、そこで、エンディングにつながるシーンとなり、タイトルとなります。
「鶴舞新地」という架空の場所での人間関係が描かれ、それぞれの力関係が描かれます。
商売女という点からも、色々と事情があるようで、人によっては、入れ墨を入れることで、トラブルをあえて回避するというところなら、裏社会的なところも描かれます。
一美という嬢が登場しますが、このキャラクターの背景はあまりくわしく描かれません。
茂と一美を中心に物語が描かれますが、徐々にその周辺の状況も描かれていきます。
「客が私を選んだんだ、客にだって選ぶ権利があるんだよ」
さゆりという嬢の描かれ方はなかりキツイなぁとは思いますが、その背景も過去も詳しく描かれません。
大阪の飛田新地は、撮影禁止という場所であり、実際、この地を映画の舞台とするところで、かなりの準備とリサーチが必要だったとは思います。そのため、本作でも「鶴舞新地」という架空の名称が使われています。
そもそも、この地域は遊郭と呼ばず「料亭」という場所であり、そこにいる遊女と自由恋愛に陥るという建前として成り立っています。その描写はほとんど説明されないので、この地域の環境をもう少し説明したほうが良かったのかもしれません。
一美の状況も徐々に描かれてきますが、両親の事情により、水商売と言いつつ、遊郭で仕事をしていることがわかります。
その他にも、元学校の先生と生徒の物語も描かれ、断片的な小さなシナリオがいくつかまとまった構成となっていることが見えてきます。
遊郭街の構造とその仕組みを描いていますが、実際に本当なのかどうかはその場所に行ったことはないのでわかりません。
「あのこにとって、はるちゃんは天使やったんとちがう?」
「わしらと女は欠陥商品や」
一美の過去も中盤で明らかになってきます。その過去を知った上で、茂の選んでいく道筋が見えてくることで、展開もシリアスになってきます。
そのため、ちょうど中盤で、「登場人物たち」や「観ている側」もいろんな意味で盛り上がるところだと思います。
主人公 茂のキャラクター造形が弱く、むしろその周辺の人物の方が興味深いところも出てきます。
「ウルトラマソ」の登場から、意味が通じないところがありますが、しっかりと終盤のポイントになってきます。これも、群像劇のようなところとなってきます。
「なんかいいよね、人をすきになるちゅうこと」
さすがに終盤の展開は無茶なところがあり、シレッと一美の道筋も描かれますが、明確なところとはならないです。
明確にならないというところで、ラストシーンも判断は見ている側に委ねられるところとなります。
シリアスな要素と群像劇的なところで、多少想像していた物語とは異なっていたところがありますが、この独特な地域の社会を描いたという点では、良いのかもしれません。