作品紹介
【監督】岩井俊二
【出演】山崎裕太/奥菜恵
【個人的評価】★★★★★
【あらすじ】小学校の夏休みの登校日の1日を綴った物語。典道と祐介なずなを中心として、小学生の目線で描かれており、町内の花火大会で、打ち上げ花火を横から見るとどうなるのかを確かめにいくストーリー。
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? – New Color Grading –
サブスクで観る
毎年夏が来れば観たくなってしまうとんでもない名作
制作のキッカケは、フジテレビ番組の「if もしも」の第16回目作品。
岩井俊二監督は、当時フジテレビ関連のドラマで作品を発表していたことが多く、本作もその一環。
毎回、TV局側から設定制限のあった指示で制作をしていましたが、要所要所で、TV企画側の本来の意図を逸脱する作品が用意されていました。
問題ではあったそうですが、結果的に大きな反響を呼んでいたことは、岩井監督の意図していたことらしいです。
のちに劇場映画化もされましたが、タモリの解説がなくなっているため、わかりやすさが多少下がりました。しかし、この作品はわかりやすwい作品に留めてはいけないので、特に問題ではありません。
わかりやすくしなくても良いという点は、結局その後どうなったかという回答は、想像がたやすいからであり、語るべきところはすべて物語の中で語られているところにあります。
物語についてですが、この設定としての小学生高学年というところからして見事。
大人でもアリ、子供でもアル。それでいて大人でもなく、子供でもない。そんな思春期前の子の気持ちの持ち方と世界に映し出されていることが絶妙なところにあります。
この頃の子供は妙に大人の憧れもありつつも、現実は理解できないから、自由なところだけをみて、自分だけでも出来るような錯覚があるような気がします。
その見せ方が見事。
帰る家もあるし、どこまでも遠くへ行っても、その世界の広さには想像ができないからこそ、抜け出せない現実もあり、戻る場所はあるわけです。
そのちょっとだけ先を踏み込んだような「なずな」の思いは、まさしく子供であり、大人でもあります。
ふと我に返り、電車に乗れないところもその絶妙さであり、現実世界に放り出される恐怖があったのかもしれません。
クライマックスのプールのシーンはやはり挿入曲が素晴らしく、「Forever Friends」と名付けられた名曲は、続くセリフとともに取り返すことのできない思い出と現実を見事に現していると思います。
「if もしも」という題材が上手く生かされ、選択肢は用意されるつつも、選んだ道筋と決められてしまった道筋が絡み合い、「今度会えるの二学期だね、楽しみだね。」というセリフですべてのテーマが言い表されていると思います。
典道の受け取った意味となずなの決意が含まれたこの言葉は、余韻を残す手法としてはとんでもなくスゴイ台詞であり、名作であることを決定づけるところだと思います。
アニメ版が2017年に制作されましたが、やはりアニメ版は別物。
毎年夏が来れば観たくなってしまうとんでもない名作です。
予告編
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