作品紹介
【監督】白石和彌
【出演】綾野剛/YOUNG DAIS/植野行雄/矢吹春奈/瀧内公美/ピエール瀧/中村獅童/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】1970年代の北海道が舞台。主人公 諸星要一は柔道の腕前を買われ、北海道警の刑事となる。正義感は強いが、なかなか実績に結びつかないない中、成績を収めるには裏社会と付き合いスパイを作ることを勧められる。裏社会と結びつきながらも、自ら裏社会への足を踏み入れていってしまう。
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卓越した演出力で、物語の贅肉のない内容の傑作
白石和彌監督は、北海道出身の監督で、若松孝二監督の元で映画製作に関わり、「ロストパラダイス・イン・トウキョー」で長編映画デビューをします。
主演の綾野剛は、「仮面ライダー555」で役者デビューをし、中野裕之監督の「全速力海岸」で主演にもなります。
本作では役作りのために、10kgの減量をし、日焼けと酒を塗って顔をむくませていました。
原作は稲葉圭昭による『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』であり、稲葉事件をモチーフに、現役警察官による覚せい剤取引や拳銃売買、そして背景にある警察の組織的な裏金作りや不祥事、それに翻弄され没落していく道警刑事を描いた作品です。
1970年の時代考証のために、札幌ではなく三重県四日市市と桑名市でほとんどの撮影が行われました。
なお、北海道ではあまり瓦屋根が使われないため、画面に映り込まないように配慮されています。
物語は、裏社会を利用して地位を確立していく刑事が、次第に判別がつかなくなっていき、破滅寸前まで破綻していく物語です。
こう書いただけで、個人的にはとても興味がそそられる作品で、実際、観だすと最後まで一気に観られるテンションの高さがあります。
北海道警の腐敗構造は、実話でもあり、脚色されてはいると思いますが、この興味深い裏社会の駆け引きには、常に緊張感の走る展開となっています。
こういう映画は、北野武監督が得意とするところですが、北野組ではない全くの新しいクリエイターの作品として興味深いところになります。
序盤は、警察組織で成果を悩んでいる諸星は、先輩刑事に「スパイを作ること」を教わる。
なお、この先輩を演じるのはピエール瀧で、2019年時点で、薬物所持でリアルに逮捕されている事での自供から、すでにこの時にもコカインを使っていたのだと思うと、妙に複雑な気持ちになります。
スパイのリークを元に、多少無茶な操作を行うが、ヤクザの幹部に目をつけられてしまう。
持ち前の柔道の強さと負けん気で、徐々に周囲から認められ、さまざまなコネが生まれ始める。
そのうちに拳銃所持に検挙率が認められ、拳銃の密輸を計画し、それを検挙することで、成果をさらに上げていく。
成果を右肩上がりに伸ばしていきながら、その裏では、裏社会の人と関係を結んでいき、表でも裏でも認められるようになります。
中盤では、大漁の拳銃密輸検挙の見返りに、麻薬の密輸を見逃す計画を立てますが、裏切り者も出てきて、徐々に破綻し始めてきます。
20kgの薬物の密輸が、結果的に大幅に超える量の密輸が行われ、さらにその麻薬が持ち逃げされてしまい、苦境にも立たされます。
この時の拷問はやはり恐ろしいところもあり、バイオレンスが苦手な人にはチョットおすすめできなくなってきます。
結果的に、地方の部署に異動となり、その間に薬物にも手をつけてしまいます。
その後、再び北海道警の元の部署に戻れますが、意外な展開が待ち受けています。
バイオレンスと裏社会を描きながら、飽きさせる要素が全くなく、一度見始めると止められなくなるスピード感とテンションで物語が綴られています。
卓越した演出力で、物語の贅肉のない内容の傑作です。