作品紹介
【脚本】木皿泉
【出演】仲里依紗/鹿賀丈史/星野源/溝端淳平
【個人的評価】★★★★★
【あらすじ】主人公 テツコは、夫の一樹と死別して7年が経つが、ギフと呼ぶ義理の父親 連太郎と2人暮らしをしている。会社の同僚の岩井さんに好かれてはいるけれど、一樹のことを忘れられず、一樹の遺骨を持ち歩いている秘密もある。そんな前に進み出せないテツコはさまざまなな出来事をキッカケに自分自身を見直していく。
サブスクで観る
なにかに囚われている人々だからこそ魅力があり、そして、その悩みや苦しみ、喜びや楽しみがあるのだと思います
夫婦で脚本を書いている木皿泉(ペンネーム)のNHK BSで放送していたドラマ。
木皿泉は寡作な脚本家ながらも、作品は全て素晴らしく、日常の機微の中にちょっとした心に訴える物語作ることに定評があります。
過去には「すいか」「野ブタ。をプロデュース」などの作品があります。
木皿泉自身は初の小説として、発表後、第27回山本周五郎賞候補作、第11回本屋大賞で2位にランクインされ、ドラマ化をしている。
全7回(台風とくす玉/星と雪だるま/山とエレベーター/幽霊と△/カードと十手/蟻とオンナ/ご飯と銀杏 )
仲里依紗の声はとても良い。なぜなんだろうか、このしっかりと音が通るところが個人的にツボなのかもしれません。決してダミ声でもなく、女性特有の高い声でもなく、ただただ飾らない感じが良いのだと思います。同様の声を出す人に宇多田ヒカルもそうだと思います。
毎度出てくる食事が非常に美味しそうである。
仏壇のごはんを食べるということが一番はじめに描かれますが、この設定の生かされ方は安易な意味合いが込められているわけではなく、並大抵ではない素晴らしい設定があります。
ご飯を炊く鍋がちょっと良い。やはり電子ジャーで炊くよりも鍋でご飯は炊きたい。
エンディング曲はプリンセス・プリンセスの「M」で、1988年の曲でもあり、相当古い曲ですが、この歌詞とドラマの内容にはものすごくマッチングしているところがあります。(Mの歌詞の真意は、作詞のo富田京子の実体験によるものだと言われています。)
第1話の脚本が秀逸過ぎて困る。
とにかく全話において名言が多いので抜粋させていただきます。
「とどまるのってそんなにだめなことなのかなぁ」
「何かを食べなきゃ生きていけない」
「人は必ず死ぬんだからね」
「人間ってめんどくさいものなんですよ」
「お前が走んねえ限り道はできねぇんだよ」
「おーい、一樹おれはここにいるぞ」
「自分の中の暗い淵をうっかり覗き込んでも戻ってこれる、そんなのが欲しかったんだ」
「何か、つかまるものを探すんだよ 心から信じることのできる、なにかつかまるもの。」
「勝負って どうなったら勝ちなの」
「あるんですよね 人から見ればみじめに見えるときでも、夢のようにキラキラ輝くときが」
「誰よりも幸せになってよし」
登場人物はすべてなにかに囚われているところがありますが、なにかに囚われている人々だからこそ魅力があり、そして、その悩みや苦しみ、喜びや楽しみがあるのだと思います。
そんな全てにおいて布石のあるストーリーを見事に回収し、そしてそれをさも日常の風景を描くことだけで描ききっているところは、ドラマの一つの究極の形なのかもしれません。