作品紹介
【監督】本広克行
【出演】柳葉敏郎/福本莉子/齋藤潤/前山くうが/前山こうが/松下洸平/矢本悠馬/生駒里奈/丹生明里/松本岳/佐々木希/飯島直子/小沢仁志/木場勝己/稲森いずみ/いしだあゆみ/
【個人的評価】★★☆☆☆
【あらすじ】主人公 室井慎次は、警察を辞めて、故郷の秋田で生活をしていたが、自宅のそばで他殺死体が発見されたことと、かつて猟奇殺人犯として捉えられた日向真奈美の娘の日向杏が現れ、事件となっていく。
世代交代ができなかった作品
本広克行監督は、学校卒業後、ADやディレクターの仕事を経て、1992年深夜ドラマ『悪いこと』にてドラマ監督デビューをしています。その後、1996年『7月7日、晴れ』で映画監督デビューをし、織田裕二の推薦で『踊る大捜査線』のチーフ演出に抜擢され、ヒット作として、シリーズ映画2作目において実写邦画興行成績の歴代1位となっています。その後もアニメ監督等幅広い演出能力を発揮しています。
柳葉敏郎は、劇団ひまわりに入団し、その後、「一世風靡セピア」のメンバーとして活躍しています。1980年にテレビドラマに出演するようになり、1982年「胸さわぎの放課後」で映画デビューをしています。1997年『踊る大捜査線』シリーズで当たり役となり、以降も様々な作品で活躍している俳優です。
物語は、元警察官僚の主人公が警察官を退き、故郷の秋田で地域のために過ごしていたが、そこに現れた少女により、過去の事件と対峙していくストーリーです。
序盤から、前作の引き続きとはなりますが、前作を観ている前提となるので、細かい説明はさほど描かれず、物語は始まります。
前作では、TVシリーズや映画版などの一部のシーンを要所要所で折り込みつつの演出でしたが、今回は、室井慎次以外のキャラクターもある程度フィーチャーされてきたので、本作では、今回のシリーズでの登場人物で物語を進めてきます。
後編でやっと物語が進んでくるところでもあり、逆に言えば、踊る大捜査線はほぼ関係ないような流れでもあります。
物語自体がシリアスな話になってきてしまうのは、室井慎次自体がコミカルなキャラクターでもないので、しょうがないところですが、そもそも踊る大捜査線に求めているところは、シリアスドラマでも人情物語でもないので、踊る大捜査線を期待して観るのはおすすめできないです。
やはり映画として制作したところがいまいち理解しづらいところでもあり、テレビドラマテイストな感じは否めないところがあります。
映画の内容ではなく、制作すること自体に大人の事情が大きく絡んでいるところもあり、制作意図が視聴者向けではないような空気感も非常に大きいです。
室井慎次2部作の後編として徐々に何をしようとしているのかがわかるのですが、本シリーズでは、室井慎次が警察組織では成し遂げられなかったことを自らの周辺を見つめ直し、次の世代にメッセージを送るというところがあります。
イマイチ飲み込めないのは、室井慎次自体に子供がいるわけでもなく、結婚もしていないので、いままでプライベートなことがわからないキャラクターが自身のプライベート周辺で物語を描かれても、肩透かし感があるのかと思います。
思えば、踊る大捜査線シリーズは、組織や現場の話であり、多くの登場人物は出てきますが、各個人の生活感がほぼない作品でもあるので、各キャラクターのプライベートを描かれても、あまりピンと来ないわけです。
本作の制作と作品のイメージからもわかるとは思いますが、室井慎次の総括となる作品ではあるので、ある程度オチも予測はできるのかと思います。
このまとめ方も多少大人の事情があると思われ、2026年公開の「踊る大捜査線 N.E.W.」につなげるところにもなりますが、多くの登場人物がいるにもかかわらず、キャラクターを活かしきれなかったシリーズなので、「踊る大捜査線 THE MOVIE」以降、駄作しか用意できなかったところは、シリーズ作品を作る難しさがあります。
青島、室井、和久のキャラクターの個性とインパクトで成り立ってる作品でもあり、組織論などのメッセージもありますが、結局のところ、イメージが固定化しずぎてしまっているので、世代交代ができなかった作品とも言えます。
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