作品紹介
【監督】山中瑶子
【出演】河合優実/金子大地/寛一郎/新谷ゆづみ/中島歩/唐田えりか/渋谷采郁/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 カナは、将来に対して漠然としており、何に対しても情熱を持てずにいた。同棲している恋人がいるが、自信家のクリエイター ハヤシと出会ったことで、気持ちが変わり始める。

本作は病を描いた作品ではなく、カナの見る世界を描いた作品でもあり
山中瑶子監督は、2017年「あみこ」で監督デビューをし、PFFアワード2017で観客賞を受賞し、その後、数々の映画祭でも評価されています。2024年『ナミビアの砂漠』で第77回カンヌ国際映画祭 国際映画批評家連盟賞を受賞しています。
河合優実は、2019年に芸能界デビューをし、『インハンド』でテレビドラマに初出演しています。その後、2019年「よどみなく、やまない」で映画初出演をし、2020年「透明の国」で初主演をしています。『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』での演技で評価されており、2022年には8本と非常に多くの作品に出演しており今後の活躍が期待できる女優です。
金子大地は、2014年に『アミューズオーディションフェス2014』の俳優・モデル部門を受賞し、以降、ドラマや映画に出演しています。2016年『64-ロクヨン- 前編』で映画デビューをしており、2021年『猿楽町で会いましょう』では、映画初主演をしています。
物語は、何にも関心や情熱が持てずにいる21歳の女性が主人公。彼女には同棲している恋人がいたが、自信家で刺激的な男性に出会い、彼女自身が居場所を見つけようとしていくストーリーです。
序盤から、町田市の繁華街を歩く人通りが描かれ、そこにカナが闊歩している姿が描かれ、そこからとある喫茶店で友達と会います。
学生時代の友達が自殺してしまったという話や近況などを話していますが、カナ自身も特に日々の生活に特になんのビジョンもないまま過ごしています。
この喫茶店でのシーンが非常に凄い演出であり、友達との会話以外にも、お客の会話もザッピングされており、カナがどういうことを思いながら会話をしているのかがうまく演出されています。
河合優実の主演作品でもあり、物語としてはカナの視点で描かれているので、非常に変わりやすい作りです。
カナには彼氏もおり、友達もいるので、何も不自由は内容にも見えますが、カナの言動を見ていると、実はそうではないところが、言動や雰囲気だけでわかります。
ナミビアの砂漠という題名が意味深でもありますが、アフリカの南にあるナミブ砂漠のことを指していると思われます。ナミブという言葉は、現地の民族の言葉で「なにもない」という意味となっており、主人公 カナの心情を示しているともいえ、自分探しの作品のようにも思えます。
カナのキャラクター像が徐々にわかってくる展開はちょっとゆっくりとした演出でもあり、女性向けエステで仕事をしているという点も、何も考えずに生活をしているカナの数少ない社会との関わりにも思えます。
カナ自体、生活や友人関連に大きな不満はないように見えますが、とはいえ何をしたいのかはいまいち見えていないところに、本作の感情移入の先がわかりにくい感じがあります。
細かい説明も特にはされないので、状況をみてカナの思っているところを感じ取っていく必要はあります。
また、河合優実のヌードシーンもありますが、シーンの必要性があまり感じられないので、なぜあのシーンが必要だったのかはちょっとわかりにくいです。
中盤まで大きな説明もなく淡々とカナを中心とした生活が描かれていきますが、いまいち内容が理解しづらいところもあります。
本作は、カナのような人には理解されやすいのかもしれませんが、日々の暮らしに何も不安や焦燥を感じていない人ほど、本作を理解できるような気もします。
なんとなく、カナ自体は、周囲にかまってくれる人がいるので、大きな不安も不満も見せず、とはいえ、何をしていったら良いのか漠然とした生活で、過ごしているところになります。
中盤で、多少事件はありますが、とはいえ、この事件がどうにかなるわけでもなく、むしろこの環境に置かれているカナは、どう考えているのかをうまく読み取っていくことで、本作の何たるかがちょっとわかるところもあります。
「あたし、中絶したんだよねぇ」
あんまり自分のことを話してなかったカナですが、サラッと説明をしています。実際には、この言葉が本当なのかどうかがちょっとわからないところもあります。
元カレと今カレの間で揺れ動く様は、どうにも感情移入しづらいところもあり、それぞれのキャラクターがどうしたいのかがふわっとしているので、詳しく状況を掴み取りにくいです。
とはいえ、本作はそういう物語でもあり、この感覚に共感できるかどうかで本作の評価が変わってきます。
カナ自体、特になにも自分自身のこだわりがないようなところでもあり、ふわっとしているようでもありますが、カナの周囲の人物がむしろこだわりを持つ人が多く、この点のコントラストが徐々に際立ってきます。
「ニートの男が赤ちゃん拾って育てる話」
「おかしいだろ、忘れてんのが」
カナの怒りはわからないことはないですが、この感情は、かなの躁鬱的なところでもあり、中盤以降の展開で、徐々に本作の大きなメッセージが見えてきます。
「自分で考えろよ、クリエーターだろ」
「え、あたし、躁鬱なんですか?」
オンラインで、医者の診断を受けているカナは躁鬱的なところがあると診断されます。この時点で、なんとなく今までの経緯に辻褄が合うような気がします。
とはいえ、本作は病を描いた作品ではなく、カナの見る世界を描いた作品でもあり、彼女の状況を把握していくところになります。感情移入しづらいのも、とても納得できるところに感じます。
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