作品紹介
【監督】 成田洋一
【出演】福原遥/水上恒司/伊藤健太郎/嶋﨑斗亜/上川周作/小野塚勇人/出口夏希/中嶋朋子/坪倉由幸/松坂慶子/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 百合は親や学校に不満を抱えながらひみを過ごしている高校生。ある日、母親と喧嘩をし、近所の防空壕跡で一晩を過ごすと、翌朝、1945年6月の日本にタイムスリップをしていた。
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なんとなく、やりきれない気持ちを感じてしまう作品
成田洋一監督は、CMディレクターとして600本以上の制作活動をしており、2022年「光を追いかけて」で映画監督デビューをしています。
福原愛は、2005年より子役として活躍し、NHKアニメ『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』で主人公 柊まいん役として人気となります。番組終了の2013年以降は、女優やモデルとして多彩な才能を発揮しています。
本作は、SNSを中心に話題を集めた汐見夏衛の2021年刊行のベストセラー小説です。
物語は、学校や親に不満を抱えながら生活をしている主人公の高校生が、ある日、親と喧嘩をし、防空壕跡で一夜を過ごすと、戦時中の日本にタイムスリップしてしまい、そこで特攻隊の青年と出会うストーリーです。
序盤から、百合の学校性活が描かれ、さほど優等生でもなく、ごく普通の女子高生と母親の生活が描かれます。
父親をなくしてしまったていることで、苦労をしている母親に辛く当たってしまう百合ですが、福原遥はさほど悪人な印象がないので、わがままなところがしっくりとしない印象です。
防空壕で一晩を過ごしてしまうことで、1945年にタイムスリップをしてしまいますが、服装自体はさほど大きくは変わらないものの、やはり、ソンジアの違和感は感じてしまいます。
食事や生活に関してのジェネレーションギャップはありますが、本作は、タイムスリップしてしまったことで、当時は戦争で逃れられない運命を背負ってしまう若者の悲哀を織り交ぜながら、描かれていきます。
作品はわかりやすくできていることもあり、主人公視点で、現代と1945年の違いを描いていくので、物語を見失うことはありません。
佐久間彰という青年と出会うことで、運命が変わっていくというわけではなく、百合自身はどちらかといえば空気のような存在でもあり、世の中の流れを変えるというよりも、流れに交わっていくところになるので、時代に翻弄されるという表現のほうがしっくりきます。
時代が変わらないかわりに、時代の流れのために大切な人を失ってしまうということを百合は目の当たりにしていき、戦争の結末がわかっているからこそ、百合に感情移入して、その理不尽さを感じていくところとなります。
終盤、特攻隊として出撃をする佐久間彰と、1945年から現代に百合が戻れるのかは、映画を観てもらうほうが良いです。
戦争映画とラブストーリーを織り交ぜつつも、戦争反対ということを単に描くのではなく、今までの戦争映画とはちょっと違う点を描いているところに、なんとなく、やりきれない気持ちを感じてしまう作品です。