作品紹介
【監督】石井裕也
【出演】松岡茉優/窪田正孝/池松壮亮/若葉竜也/仲野太賀/趣里/高良健吾/MEGUMI/三浦貴大/鶴見辰吾/北村有起哉/中野英雄/益岡徹/佐藤浩市/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 折村花子は、映画監督の夢を持っていたが、プロデューサーに騙され夢が潰えてしまう。夢を諦めずに戦うことを選んだ花子は、音信不通だった家族とともに夢を取り戻し始める。
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こんな配役の映画はもうないんじゃないか?そんな気もします
石井裕也監督は、2005年『剥き出しにっぽん』を卒業制作として発表し、評価されています。2009年「川の底からこんにちは」で評判となり、第53回ブルーリボン賞監督賞を史上最年少で受賞しています。2013年『舟を編む』では、第86回アカデミー賞外国語映画部門日本代表作品に選ばれており、世界的にも評価されています。『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『生きちゃった』『茜色に焼かれる』など、話題作を多数手掛けています。
松岡茉優は、8歳のときに妹がスカウトされ、その際に妹のついでにスカウトされます。2008年『おはスタ』のおはガールとして出演し、その後はドラマやテレビのホスト役など女優にとどまらない活躍をしていましたが、2007年『勝手にふるえてろ』で評価され、様々なジャンルで活躍しています。
窪田正孝は、オーディションに合格し、芸能界入りをし、2006年『チェケラッチョ!! in TOKYO』でテレビ初主演でデビューしています。その後、2008年『ケータイ捜査官7』で主役となり、様々な監督と仕事をし、徐々に評価を上げ、テレビや映画と活躍している俳優です。
池松壮亮は、「ラストサムライ」での出演から、子役として活躍し、現在では多数の作品で印象的な演技で定評のある役者です。
若葉竜也は、2005年「HINOKIO」で映画デビューをし、テレビや映画で活躍をしています。今泉力哉監督作品などに多く出演をしており、2020年は「ワンダーウォール 劇場版」「生きちゃった」「朝が来る」「罪の声」「AWAKE」と多くの映画作品に出演し、今後が期待の俳優です。
主題歌は、エレファントカシマシ「ココロのままに」となります。
物語は、映画監督を目指す主人公がプロデューサーに騙され、失意に陥るが、音信不通の家族のもとに訪れ、家族の力を借りて、夢を取り戻すために闘うストーリーです。
序盤から、折村花子が一眼レフカメラで動画を撮影しているシーンから始まり、飛び降り自殺をしようとしている人のいる現場付近で撮影をします。この場所は、千葉 葭川公園駅周辺となります。
「それ、面白いんですか?」
花子は、自殺の現場に遭遇し、撮影をして、ドキュメンタリーとして撮影内容を持ち込むのですが、映画のプロダクションではあまり興味を持たれないところもあり、プロデューサーと飲み会をしますが、いまいち本音の部分で噛み合わないような印象があります。
本作は、コロナ禍の物語でもあり、コロナ禍を前提として観る必要があります。2024年現在でも、ちょっとコロナで過敏になっている生活風習は理解されにくいところもあります。
「このプロジェクトが成立して初めてあなたにお金が支払われる」
プロデューサーと監督の関係性ですが、ちょっと考えるとわかるのですが、収入と仕事の関係を考えれば、むしろ非常識な感じなのは花子のほうであり、とはいえ、その弱みにつけ込むところもあります。
「わたしは、わたしのやり方でやりますから」
「リアルにやるのがリアルじゃないんですよ」
撮影に関していろいろと事実がどんどん変わっていくところもありますが、プロデューサーの言葉はあまり信じられないようなところもあります。
映画のタイトルは「消えた女」となりますが、この題名は後々の伏線になっています。
「だいじょぶ、だいじょぶ」
プロデューサーのセリフは非常にドライなところもあり、逃げ道が常に用意されている会話でもあり、こういう人はいろいろなところにいるのだなぁと思います。
主人公に感情移入をするという点では、かなりプロデューサーに嫌悪感を覚えます。というか、前半はその流れの上で、後半の物語につながっていきます。
ちなみにベテラン俳優として登場している鬼頭三郎役の中野英雄と、落合役の仲野太賀は初の親子共演かと思います。
窪田正孝演じる舘正夫は、本作では、中心に近いところにいながらも、ほんのり脇にいるようなそんな感じです。このあとに出てくる折村一家の濃さが本作の見どころです。
中盤で、花子の家族が実家に集まり、花子自体は自らで映画を撮影しようとします。その時に、父親と長男、次男、花子、正夫の4人の口論がありますが、このシーンはなかなか良いです。
この家族がなぜ破綻したのかがわかりますが、松岡茉優、窪田正孝、池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市が同じ場所で口論をするという演出自体が非常によいです。
「なんで、みんな赤なんでしょうか?」
折村一家全員が、良い俳優を集めておきながら、口論をしているだけというところとかは、もう贅沢過ぎるところがあります。特に池松壮亮自体の存在がスゴイです。
「ここにきて、はじめて家族というものを知りました。よくわからなくて面白いですね。」
正夫だけが唯一血縁者ではないのですが、花子に惚れているという点が、ある意味家族という要素でもあります。
携帯電話の解約のシーンも家族全員がケータイショップで交渉をするのですが、コントのようでもあり、でも、演技のうまい俳優が一家で演じているので、面白くて仕方ないです。
「死をどうやって証明するのですか?」
口論しているだけですが、コントのようでコントでもないところがあり、やはり池松壮亮の存在感がとても良いです。
5人が一緒に行動しているこの流れは、何も説明はないのですが、家族を描いている花子としては、本当の家族を描けていなかったというのはよくわかります。
劇中劇とは言わないのですが、この構成の巧みさは本作のブッ飛んでいる要素かもしれません。
「残っているのはいい思い出ばかりだ。ほかは忘れちまった。」
5人での食事のシーンもスゴイです。特に「夏の思い出」の曲が泣かせてくれます。泣くというよりも心に刺さってくるのが半端ないです。
「ハグに理由がいるのか?」
花子の作りたい作品はすでに存在しているのかと思いますが、ちょっと考えるとわかるような構造になっています。
本作は、松岡茉優、窪田正孝、池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市の家族全員が本作の素晴らしいところで、こんな配役の映画はもうないんじゃないか?そんな気もします。