作品紹介
【監督】三池崇史
【出演】綾野剛/柴咲コウ/亀梨和也/木村文乃/光石研/北村一輝/小林薫/小澤征悦/髙嶋政宏/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 薮下誠一は小学校の教師。生徒の氷室拓翔への体罰が問題として、保護者の氷室律子から告発され、裁判にもなるが、薮下は裁判で「すべて事実無根のでっちあげ」と無罪を主張する。
最後に裁判所が爆発しても三池崇史監督作品なら特に違和感もないのですが
三池崇史監督は、今村昌平の私塾で映画を学ぶが、大師匠の大庭秀雄が最初の授業で書いた「脚本とは芸術である」を聞き挫折し、アルバイトに明け暮れるが、先輩から頼まれて助監督を務めるようになり、今村昌平、恩地日出夫、野田幸男、西村潔、井上梅次、舛田利雄、村川透らの現場に就いた後、1991年『突風!ミニパト隊』で監督デビューをしています。ジャンルが幅広く、短期間で多作であり、それでもなお、独特のスタイルがあったために、クエンティン・タランティーノを始めとした海外の監督に評価され、ジャンルを問わず「仕事は来たもん順で受ける」「映像化可能であれば、まず何でもやってみる」という作家性のある監督です。
綾野剛は、「仮面ライダー555」で役者デビューをし、中野裕之監督の「全速力海岸」で主演にもなります。
柴咲コウは、14歳のときにスカウトされるもすぐには芸能界入をせず、16歳で芸能活動を始めます。芸名は、かわかみじゅんこの漫画 『GOLDEN DELICIOUS APPLE SHERBET』の登場人物「柴崎 紅」に由来しています。2000年「東京ゴミ女」で映画デビューをし、同年「バトル・ロワイアル」で注目されます。2001年「GO」の好演もあり、その後、テレビや映画で活躍をしています。歌手や実業家としての側面もあり、多彩な才能で活躍しています。
物語は、小学校教師の主人公が、生徒への体罰に関して保護者から訴えられるが、裁判での法廷で、事実無根のでっちあげと主張し、正しい事実を追求し始める。
本作は、福田ますみのルポタージュ「でっちあげ 福岡『殺人教師』事件の真相」がベースとなっており、事実に近い内容で描かれた作品です。
序盤から、主人公の薮下が裁判所に向かい裁判を行うシーンが描かれ、問題のあった事件の状況が描かれます。
家庭訪問で教え子のことをADHDと言い、またアメリカ人の父親を持つ子供に対して、ちょっと偏見の入った問題発言を繰り返します。
また、標的にしているかのように、特定の生徒に対して、アメリカ人の血が混じっているという理由で、暴力的なことをしていきます。
序盤から、かなりアメリカに対して偏見があるようなことで、差別と暴力を受けますが、この時点で、薮下先生の異常さが延々と描かれます。
観ている限りは、延々と薮下先生に問題があるような描かれ方ですが、裁判で無実無根のでっち上げということを主張し、事実が全く異なるということで、真相がわからなくなってきます。
本作は、2007年に福田ますみが発表した「でっちあげ 福岡『殺人教師』事件の真相」の実写映画化となります。
学校からの拓翔への問題に対して、母親の氷室律子が、暴力教師ということで、薮下を糾弾していきますが、薮下先生からの視点と氷室律子からの視点からではまったく状況が異なり、映画を観ている側からは、序盤のシーンとは同じ状況ながら、まったく違う言動のシーンを再度観ることとなるので困惑していきます。
観ているうちに、「怪物」や「ふつうのこども」という作品にどこか共通するところもあり、芥川龍之介の「羅生門」のように、ひとによってはまったく見解が異なるという展開であり、観ているうちに真実がわからなくなってきます。
薮下先生の視点からすれば、事実無根なことを言われているところではありますが、学校という組織からの視点で見れば、保護者と学校と教師という点で板挟みという点から、事実とは異なるながらも、謝罪をしなければならないという歪んだ事実による真実の独り歩きで、当事者以外の人の心象が誘導されていきます。
この怖さはちょっとした小さな嘘が徐々に大きな問題となってしまい真実が曖昧となっていくところは、本作の事実の行方ということがとても気になるところではあり、物語のダレ場がなく観続けていけます。
氷室律子演じる柴咲コウがサイコじみているところがあり、本作の問題点はモンスターペアレンツに問題があるというわけではなく、真実を見ずに、周囲の状況のみで真実の結論を結びつけてしまうところは、同調圧力の怖さを感じてしまうところでもあります。
「いまは、黙ってやりすごす」
学校側は穏便に物事を済ませたいのですが、なんの因果か、問題の対象として薮下先生が作り上げられた虚像の対象となるのは、さすがに違うのではないのか?と思うわけです。
「事実ではないことを事実だってことを私は認めたくない。」
裁判で、薮下は事実を認めないということで弁護士を立てて裁判で争うこととします。
「そもそも、この事件、リアリティがないんですよ。」
中盤まで観ていると、氷室律子の言動が異常に見えてくるところでもあり、裁判所での争いもちょっと違って見えてきます。
「大勢の人間が信じたら、それが真実になるんですか?」
裁判で証人を得ようと、他の教え子の家を訪問しますが、そこでマスコミに出会い、悪印象を与えるようなことが起こってしまいます。
裁判は終盤で判決が出ますが、どのような判断となるのかは観てもらうのがよいでしょう。
そのさきの話もしっかりとありますが、やはり不当に陥れられ、困惑する展開と、スッキリしないところについては、ものすごく考えさせられます。
主人公は長い時間を掛けて疑惑が晴れることになりますが、氷室律子に対しての感情は吹っ切れることができないという点でも、遺恨が残るところも感じます。
三池崇史監督作品としては、かなり社会派な作品でしっかりとまとめられており、見応えある作品です。
最後に裁判所が爆発しても三池崇史監督作品なら特に違和感もないのですが、実際に発生した事件をモチーフに作られた作品でもあり、正攻法な三池崇史監督作品として素直に観られる作品です。
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