作品紹介
【監督】城定秀夫
【出演】北村匠海/河合優実/伊藤万理華/毎熊克哉/箭内夢菜/竹原ピストル/木南晴夏/
【個人的評価】★★★★★
【あらすじ】主人公 佐々木守は、市役所に勤める男性。同僚の宮田より先輩が生活保護受給者に肉体関係を強要している相談を受け、原因究明をしていく。

城定秀夫監督作品として最高レベルな展開
城定秀夫監督は、ピンク映画やオリジナルビデオで助監督を務め、2003年『味見したい人妻たち』で映画監督デビューその後もピンク映画のみならず、多彩な作品を送り出している監督です。
北村匠海は、もともと、ダンスロックバンドDISH//で活動をしており、2017年『君の膵臓をたべたい』で注目され、2020年『とんかつDJアゲ太郎』では、映画初単独主演をしています。非常に多くの作品で主演を演じており、役者としての活動も増やしてきています。
河合優実は、2019年に芸能界デビューをし、『インハンド』でテレビドラマに初出演しています。その後、2019年「よどみなく、やまない」で映画初出演をし、2020年「透明の国」で初主演をしています。『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』での演技で評価されており、2022年には8本と非常に多くの作品に出演しており今後の活躍が期待できる女優です。
本作は、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した染井為人の小説「悪い夏」です。なお、染井為人は、「正体」で映画化やドラマ化もされており、映像化については、今回は2作目となります。
物語は、市役所に勤める主人公が同僚より、先輩職員が生活保護受給者に肉体関係を共用している相談を受ける。事実を究明していくうちに、徐々に犯罪計画が練られていることを知っていくストーリーです。
序盤から、生活保護を受けている男性の家に訪れる佐々木が描かれます。
生活保護で生活をしている男性は、ヘルニアを都合にタクシー運転手の仕事を休み、生活保護で日々のうのうと生活している状況や、空き缶を集めて生活している人々を眼の前にして、佐々木自身もちょっと悩みを感じてしまうところがあります。
季節が夏というところでもあり、非常に暑いという表現が画面からも伝わってくる程です。
生活保護者の社会復帰と状況確認のために役所から各家庭に訪問をするのですが、先輩の職員は生活保護を受けている家庭を相手に肉体関係を迫ることをしています。
なかなか重い空気のある作品でもあり、登場人物の多くがクズな感じもします。
他にも生活に困窮しているキャラクターが登場し、生活保護や貧困者が多く登場します。
本作は、生活保護者とケースワーカーと悪徳業者の関係が複雑に絡みながらの作品で、ノワール感もありつつ、登場人物のクズさもありますが、物語の展開としては、非常に引き込まれやすい展開となっています。
とにかく暑苦しい空気感が満載の作品でもありますが、更に、ギスギスしたところが非常に閉塞感を感じさせます。
窪田正孝演じる金本龍が非常に印象深いキャラクターでもあり、色々な問題の根源でもありますが、登場人物の周辺がわかってくると、ストーリーがグイグイ引っ張ってくれます。
「だったら助けてよ」
河合優実演じるシングルマザーも利用されているところはありますが、徐々に悪事に引き込もうとしていくところもあり、主人公は、北村拓海演じる佐々木でもありますが、本作は誰一人感情移入を拒むようなところはあります。
あくまで、色々な思惑の中で主人公が翻弄されていく展開でもあり、城定秀夫監督の演出もあり、非常にわかりやすく引き込まれやすい作品になっています。
「ここを駆け込み寺だと思ってきてくれちゃ困るんですよ」
佐々木自身もどんどん疲弊していきながら、爆発をしていく緩急は、北村匠海だからこそできる感じに思います。
救いのないような展開ですが、この複雑な感じの底なし沼のような展開はかなり鬱屈するところでもあり、佐々木自身がどのような決着をつけるのかは、観てもらうのが良いです。
ひとこと書いてしまうと、この終盤は城定秀夫監督作品として最高レベルな展開でもあります。すでに伏線も張られているので、予測もできそうですが、とは言っても実際この展開は観てもらうほうがよいです。
とにかく暑くて悪い夏というところはしっかりと画面からにじみ出てくるところもあり、この暑苦しさだけでも観てもらいたい凄さではあります。
予告編
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