【日本映画】「碁盤斬り(2024)」★★★★☆【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】白石和彌
【出演】草彅剛//奥野/市村正親/立川談慶/
【個人的評価】

【あらすじ】主人公 柳田格之進は、身に覚えのない罪で故郷の彦根藩を追われた浪人。娘と2人で江戸に暮らしていた。柳田格之進は囲碁を嗜んでおり、嘘偽りない勝負をしていた。ある日、過去の事件の冤罪を聞き、仇討ちをする。

碁盤斬り

碁盤斬り

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世界は狭いところでの物語ではありますが、時代劇としての復讐劇としては、綿密に作り上げられた良作

白石和彌監督は、助監督経験を経て、「ロストパラダイスイントーキョー」で長編デビューをし、その後、良作を作り続けている監督で、個人的に好きな監督の1人です。

草彅剛は、元SMAPのメンバーで、現在は「新しい地図」に参加しています。SMAPの頃にグループ活動以外に役者としても活躍しており、独特な雰囲気を持つというよりも、普通の人を演じさせると好評なところがあります。

清原果耶は、小学生の頃からクラシックバレエを習い、2014年に好奇心で受けたオーディションでグランプリを獲得し、モデルデビューをしています。「nicola」の専属モデルとして活躍後、2015年NHK連続テレビ小説『あさが来た』で女優デビューをし、2017年『3月のライオン』で 映画にも初出演しています。歌手としても活動をしており、多彩なジャンルで活躍する女優です。

本作は古典落語の演目「柳田格之進」をベースとした物語で、主人公が武士の誇りとして仇討ちをする内容です。

物語は、身に覚えのない罪で故郷を追われた主人公が、ある日、冤罪の事実を聞き、復讐をするストーリーです。

序盤から、碁を打つシーンから、とある町を歩いて家に変える娘のお絹が描かれます。家賃の滞納をしている柳田格之進は、篆刻を生業として生活しているところが描かれます。

舞台は、江戸時代で柳田格之進は吉原で囲碁を打ち、そこで篆刻の仕事をもらい生活をしています。

タイトルが「碁盤斬り」というだけあり、囲碁を多少わかっていると良いかもしれませんが、とはいえ、本作の主題は、囲碁の話ではありません。

ある日、よろずやの主人のトラブルを解決したことにより、柳田格之進と主人が囲碁を打つ仲となり、徐々に柳田格之進という人物の背景がわかってきます。

柳田格之進とお絹の暮らしも貧しいながらも悪事は働いていないところもあり、お絹は吉原のお庚(こう)のところで、遊女の掟破りに対して仕置をされているところを目撃します。

一歩間違えれば、裏の世界が潜んでいる町の生活ではありますが、やはりその闇の部分が徐々に出てくるところに、白石和彌映画なところがあります。

お金と人の関係や悪事、柳田格之進の過去の出来事など登場人物の深堀りができており、主人公中心の物語でもありながら、世界観がきっちりとできています。

柳田格之進自体は穏やかな感じの浪人ではありましたが、過去の事件の話を聞いたときの物言いはまさしく武士の覚悟のようなところがあり、この演技はやはり草彅剛の良い演技ではあります。

「こうするしかないのだ」

柳田格之進は、50両のお金を盗まれたことで濡れ衣を着せられた状況で切腹をしようとしますが、それ以外の道で汚名をはらし、柳田格之進とお絹はそれぞれ覚悟を
決めるところになります。

「ええ、お絹ちゃんに惚れたんですよ」

細かいことは行間を読むところとなりますが、とはいえ、それほど難解なわけではなく、遊女として娘が引き取られたということであり、娘が遊女とさせられるまでの猶予の間に犯人を見つける流れとなります。

「侍ならその言葉に二言はないな」

柳田格之進の覚悟とふるまいは、前半の柳田格之進のふるまいとは違い緩急が効いたところに鬼気迫るところがあります。

「あの50両を作るために、わたしは、」

お絹の覚悟が一番厳しいところではありますが、50両がなくなってしまったことでの波紋がはなり大きく、お金で解決できる話だけではなく、メンツを賭けたところであとに引けないようなところを感じます。

いずれの道も悲劇しかないように思いますが、このけじめの付け方は観てもらうほうが良いです。

主役は草薙剛演じる柳田格之進ですが、その周辺の人物の個性や事情もしっかりと描かれていることで、本作の小さな世界の中だけの話が、とても重厚な感じにも受け取れます。

「碁で決着をつけたい」

なかなか、決着の付け方が意表をつかれますが、時代劇であるということで、みどころもしっかりとあります。後々、50両の紛失の原因がわかりますが、なんともやりきれないところがあります。

「弥吉、あの日の約束は忘れてはおらんな」

取り返しのつかないことが起こってしまう展開は非常にやりきれないところでもあり、結末がどうなるのかは観てもらうのがよいですが、今までの草薙剛の演技が更に一歩先に進んだところでもあります。

浪人ながらもしっかり信念に生きてきた柳田格之進というところでもあり、やはり主役は柳田格之進でもあります。

世界は狭いところでの物語ではありますが、時代劇としての復讐劇としては、綿密に作り上げられた良作です。

予告編

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