作品紹介
【監督】アリ・アスター
【出演】ホアキン・フェニックス/パティ・ルポーン/エイミー・ライアン/ネイサン・レイン/ドゥニ・メノーシェ/パーカー・ポージー/マイケル・ガンドルフィーニ/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 ボーは非常に怖がりの男性。ある日、母が怪死したことで、母のいる故郷へ行こうとする。
この支離滅裂とも言える展開を受け入れられるかどうかで賛否が大きく変わる作品
アリ・アスター監督は、学生時代に映画に感銘を受け、ホラー作品を作ることを目指し、2011年『TDF Really Works』で監督デビューをしています。2018年『ヘレディタリー/継承』で初の長編映画監督として作品を発表し、2019年「ミッドサマー」で監督2作目として、高い評価を得ています。
ホアキン・フェニックスは、子役として活躍をし、昔はリーフ・フェニックスの芸名でしたが、15歳ごろから現在の本名に改名し、以降「グラディエーター」「ザ・マスター」に出演しています。リヴァー・フェニックスは実の兄ですが、1993年、ホアキンが19歳の時にオーバードーズで他界しています。
物語は、非常に怖がりの男が、母が怪死したことを知り、母のいる故郷へ旅立とうとするが、外の世界はいつもの日常ではなくなっていたというストーリーです。
序盤から、ボーが生まれるシーンから始まり、その後、おとなになったボーがカウンセリングを受けているところとなります。
大抵のことがボーの妄想でもあり、その妄想が恐怖心になってくるので、なぜ怯えているのかはわかりやすいです。
恐怖症で部屋に閉じこもっていながらも、周囲の状況に恐怖を感じ、薬を飲みますが、薬を水なしで飲んだことで、困ったことになります。
家の向かいの店に行き、水を買うだけなのですが、周囲の人物が恐怖の対象にも見え、外に飛び出す勇気が出ませんが、やっとの思いで水を買いに走ります。このときのワンカットには注目です。
この掴みでボーに感情移入をしやすくなり、その先は、ボーの妄想癖に付き合いながら本作を見続けられます。
風呂場のシーンで、天井に何かがいるシーンは、流石にそういう妄想をした人もいるのかなぁと思います。こういう些細なことに恐怖や違和感を感じるところでボーの気持ちを感じやすくなっており、加速していく恐怖なところが意外とすんなりみられるようにもなっています。
母親が亡くなったことで、葬儀にいかなければならなくなりますが、その電話中でも、周囲で謎なことが起こったりとボーの目線ではなく、映画自体が不可思議なようにも見えてきます。
本作は179分あり、非常に長い作品でもあります。そのため、この悪夢のような妄想のような世界として、主人公視点で観ていけるので、ほとんどの物語の流れに恐怖を感じます。
ある意味、本作は変わった視点でのホラー絵がでもあり、「ミッドサマー」で感じたホラー感も含めて、アリ・アスター監督のホラーの視点はちょっと興味深いところがあります。
「正体がわかったわ」
巻き込まれ災難型の展開でもありますが、主人公 ボーの視点で描かれていき、展開も不条理ながらもわかりやすくなっているので、あとは、この長時間の内容をどう考えるかというところになります。
ホアキン・フェニックスが主人公というところでもあり、本作の好きになる要素がいまいち掴めません。ホアキン・フェニックスは良い役者ではありますが、本作を見ているとどうもやはり個性派要素が強いところもあり、主人公に感情移入はできますが、好きになれるかと言われればそれはまた違うところにもなります。
ロードムービーの要素も感じられ、展開的には場面とシーンが変わっていくごとに、新たな恐怖が出てくるといった感じです。
中盤過ぎで、母親の葬儀のために母の家にたどり着きますが、そこまでの道筋でも、現実感があるような、妄想のような、ふわっとした展開で進んでいくところもあり、母親の家でも、一種異様な感じもします。
終盤はもうイマジネーションと理解の難しい展開となりますが、本来、序盤から不条理的な内容ともなっているので、この展開はむしろ、妄想と想像力の展開でもあり、理解が難しいように思います。
予想がつかないような化け物も登場してくるところでやっと気が付きますが、本作の妄想と幻想はホラーのアプローチで観るのではなく、コメディとして観るのが正しい見方とも捉えることができ、想像の世界をホラーのように見せつつも、実際には笑い飛ばすことができれば、本作を楽しめるのかと思います。
悪夢が延々続いていくところは、まさに妄想癖のある人の脳内を映像化しているのかと思いますが、この支離滅裂とも言える展開を受け入れられるかどうかで賛否が大きく変わる作品です。