作品紹介
【監督】マーティン・スコセッシ
【出演】レオナルド・ディカプリオ/ロバート・デ・ニーロ/リリー・グラッドストーン/ジェシー・プレモンス/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】1920年頃のオクラホマ州オーセージ郡が舞台。そこで石油を掘り出し莫大な富に恵まれていた先住民が謎の死を遂げ始める。主人公 アーネストは、その土地で先住民と結婚をし、その富をかすめ取ろうとしていたが、さらに大きな問題へと発展していく。
マーティン・スコセッシ監督は、幼少期から喘息持ちでカトリックの司祭を目指してましたが、ベトナム戦争の徴兵を逃れ、大学で映画製作の勉強をします。1969年『ドアをノックするのは誰?』で初監督をし、注目され、1972年『明日に処刑を…』を監督しますが、期待外れとなり、原点回帰として1973年『ミーン・ストリート』を監督しています。その際にロバート・デ・ニーロが出演し、以来、名コンビとして数々の作品を残しています。1976年『タクシードライバー』でカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞し、有名監督の仲間入りをします。その後、『ニューヨーク・ニューヨーク』『レイジング・ブル』『キング・オブ・コメディ』『グッドフェローズ』『ケープ・フィアー』と作品を生み出し、2002年「ギャング・オブ・ニューヨーク」では、レオナルド・ディカプリオとのコンビで傑作を生み出しています。2006年「ディパーテッド」では、アカデミー作品賞と監督賞を受賞し、「シャッター アイランド」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」などの作品も制作しています。マフィアものなどの作品を多く手掛けるのはもともとシチリア系イタリア移民の家に生まれていることが由来していることもあります。非常に良作を数多く制作している巨匠です。
レオナルド・ディカプリオは、14歳でテレビCMに出演し、1991年「クリッター3」で映画初出演をしています。1993年「ボーイズ・ライフ」の好演と、「ギルバート・グレイプ」で強烈な印象を残しており、高い評価を得ています。その後、1997年「タイタニック」で非常に高い評価を得て、確固たる人気となります。「ザ・ビーチ」「ギャング・オブ・ニューヨーク」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」などに出演し、「アビエイター」「ディパーテッド」「ブラッド・ダイヤモンド」で数々の賞にノミネートされています。「シャッター アイランド」「インセプション」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でも高い評価を得ており、2015年「レヴェナント: 蘇えりし者」では、 アカデミー主演男優賞を受賞しています。若い頃からアイドル的人気もありましたが、演技力でも風格のある役どころをこなしており、出演作が毎回注目される俳優です。
ロバート・デ・ニーロは、俳優として活動をしていましたが、1974年の「ゴッドファーザー Part2」で若き日のヴィトー・コルレオーネを演じ、アカデミー助演男優賞を受賞してから、多数の話題作に出演。癖のある演技力で、観るものに何かしらの印象を残す俳優です。
原作は、デヴィッド・グラン『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』となっています。
物語は、1920年代のアメリカ ホクラハマ州。石油採掘で巨万の富を得ていた先住民が、謎の死を遂げ始める。その裏には、財産を目的とした白人たちの暗躍があったというストーリーです。
序盤から、ホクラハマの平原で、僻地に追いやられたインディアンが、石油を見つけることで巨万の富を得るところから始まります。その後、白人がその地にやってきて、ゴールドラッシュならぬ、オイルの利権を獲得し始めます。
主人公のアーネストは、戦争中に怪我をしたことで退役をし、叔父のウィリアムが居るところへ訪れます。
アーネストは、オセージのいる場所で、キング呼ばれながら裏で手引をしており、オセージ族の財産を狙っている流れとなります。
本作は3時間以上ある作品ですが、序盤からの流れからこの土地の習わしや文化の上で、部族の財産を狙っているようなところを、サラッと描いていきます。
中盤で、アーネストは結婚をし、子供ができ、ウィリアムはオセージ族の親類になりながら、叔父のウィリアムの手引で、悪事に手を染めていくことになってきます。
とにかく、流れ的には非常に観やすく、ダレるというところが少なく、緊張感で満たされた感じの作品でもあります。
ネイティブ・アメリカンとの関係性は、アメリカでの風土によるものですが、利益や財産を狙い、オセージ族と白人との関わり合いで事件が起こっていく中で、確実な悪があることで、物語の筋道としてあ理解は非常にしやすく、マーティン・スコセッシ監督の軽妙な音楽センスも相まって、どのような展開になってくかの緩急が素晴らしいです。
ロバート・デ・ニーロが演じるウィリアムは明らかに悪のように見えるのですが、これは、ゴッドファーザーのビトー・コルネオーネを感じるところもあります。
「狭き門より入れ」
終盤、叔父とアーネストとの対立となっていくわけですが、石油の利権をもとで、徐々に状況が変わってくるところがありますが、とてもおもしろいのは、レオナルド・ディカプリオが演じるアーネストが、有能で切れ者ではないところが本作がどこかに拠り所を残しているようにも思います。
「連邦政府だろ、だからこそ言っている」
主人公はアーネストでよいのですが、結局、感情移入をどっぷりできるほど魅力的な主人公ではないところに、本作を鑑賞するときの本作の客観視がしっかりと残るような印象で、その客観視が人によってはついて行けないところもあるように思います。
マーティン・スコセッシ監督の手法はどこかドライで主人公視点にさせないように感情を拒んでいるようなところも感じますが、だからこそ「タクシードライバー」や「グッドフェローズ」、「ディパーテッド」のように見応えのある作品の完成度が高いのかと思います。
最後のエピローグの演出は、画期的です。本作品は、80歳になるマーティン・スコセッシ監督の作品ですが、この演出方法の引き出しは素晴らしいです。語りとオーケストラバンドで物語の先を語るところは、過去にこのような演出を見たことがないです。
マーティン・スコセッシ監督の作家性が非常に強いながらも、決して物語が破綻しているわけではなく、高いクリエイティブで作られている作品は、
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