【日本映画】「ミッシング(2024)」★★★★★【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【出演】/有田麗未/小野花梨/
【個人的評価】

【あらすじ】主人公 沙織里は、娘の美羽が突然いなくなってしまう事件に遭う。懸命な捜索の中、3ヶ月経っても見つからず、次第に世間の話題からもなくなってしまうが、唯一、力になってくれるテレビ局の記者 砂田がいた。

メッセージ性と巧みな構成力は、傑作と言わざるを得ないです

吉田恵輔監督は、学生時代から自主映画を制作し、2006年『なま夏』で映画監督デビューをしています。2008年に小説『純喫茶磯辺』を発表し、映画化も行っています。「ヒメアノ~ル」「犬猿」「純喫茶磯辺」を制作しており、独特の世界観と演出に定評があります。

石原さとみは、2002年「ホ・ギ・ラ・ラ」で映画初出演していますが、2003年『わたしのグランパ』より、石原さとみと芸名を変えています。その後、テレビドラマに数多く出演し、2005年NHK大河ドラマ『義経』では、静御前役として出演しています。 映画よりもテレビドラマでの出演が多く、2018年「アンナチュラル」では高い評価を得ています。

物語は、突然娘がいなくなってしまった主人公の母が、懸命に捜索をするも、見つからず、力になってくれるテレビ局の記者とともに捜索を続けるが、その記者もまた、テレビ局の上層部から視聴率のために取材をする命令がくだる。

序盤から娘の美羽のイメージが映され、そこから、沙織里が何やら行動をしていますが、いまいちその行動がわからないです。

作風的に説明でわかりやすく作っている手法ではなく、徐々に状況の説明がつくような演出となっており、手の込んだ描き方をしています。

沙織里が何をしているかがわかるのは、沙織里夫婦がテレビの番組を見ているニュースで、事情がわかるようになっており、非常にうまい演出です。

沙織里と豊の夫婦と叔父の圭吾が被害者の親類で、その他にテレビ局の記者 砂田が物語の主となる関係者ですが、登場人物はその他にも多く、複雑な感じもしますが、この複雑なところを、王道ではなく演出していくところはなかなか野心的です。

「お前ちょっと、いい加減にしろよ、自分だけ辛いみたいな顔しやがって」

沙織里が精神的に病んでいるところに関しては、観ていて非常にイラッとしてきます。気持ちはわからないところはありますが、そこまで情緒不安定になるところは本当に見づらいです。

本作の演出的に、感情移入を拒んでいるようなところもあり、まず沙織里自体には感情移入は非常にしづらいところでもあります。とはいえ、夫 豊の身になるのもちょっと遠慮したいところではあり、愛娘が行方不明となるというところはちょっと引いた目線で観るのが良いかもしれません。

石原さとみが沙織里を演じていますが、情緒不安定さが非常に痛々しいところがあり、観ていてイライラするところがありますが、沙織里の心情を思えば、こういう精神状況になるのもわかります。

「結果とかじゃなく、ただ真実を撮りたいだけだよ」

沙織里自身が最も娘の行方不明の責任を負う印象もありますが、過剰なほどの自己嫌悪や後悔の塊が心に宿してしまっているところは、演技の域を超えているのでは?と思うところもあります。

「今思うと、何でもなようなことが幸せだったと思います。」

テレビ収録のシーンで沙織里が呟くことですが、一瞬コント感を感じながらも、しっかりと、その点はドキュメンタリーかのように起動修正するとところはさすがの演出です。もともと、コントではない作品なので、この台詞回しのシーンはさらに沙織里の神経を追い込むところにも感じます。

美羽が保護された演出での石原さとみの喜怒哀楽の振れ方と、失禁には演出力でしかなく、このときの嗚咽もありえない声であり、本作の制作の意図が徐々に見えてきます。

「おまえらが面白がって報道するから、こうやって頭おかしいヤツが出てくるんだよ」

「その事実が面白んだよ」

本作は、事件の解決というテーマではなく、別のところに制作意図があるのがわかります。

沙織里自身も美羽を探すためにインターネットの情報を見るのですが、やはりこういうときの情報には錯綜するところもあり、多すぎる情報が逆に追い詰められるというところになります。

「便所の落書きは人を殺さないでしょ」

中盤過ぎで、沙織里以外の周囲の人の日々が描かれているところがあり、本作のテーマが言葉を語らずとしてわかるところが秀逸です。

そこから2年後に変わり、結果的に美羽は見つかっていないのですが、似たような事件が起こり、再び沙織里が娘に対して捜索をはじめます。

「報道は、ときに間違いを起こすんです。」

このあとの展開は思っている以上に、想像の斜め上を行くところであり、結果的にこの作品の本質と沙織里の救いがものすごい着地をします。

𠮷田恵輔監督が「監督自身のキャリアの中で最も覚悟のいる作品」とも語っているところもあり、とある一家の娘の行方不明事件を描いているところはありますが、本当のテーマは違うところにあり、そのテーマとしているところは確かに今までの映画の中でも、作風化かなり違うように思えます。

「本当に良かったです。」

「美羽さんのためになにかしたいんです。」

本作はオリジナル脚本として、とても強い意志とメッセージを持ち、そのために感情移入の先を抑えて、絶妙なさじ加減でしっかりと作り上げられた物語とも言えます。

石原さとみ自体の凄さもありますが、それだけではないメッセージ性と巧みな構成力は、傑作と言わざるを得ないです。

人を選んでしまう作品ではありますが、すべてを説明する作品ではなく、事件の結末や犯人を追い求める作品でもなく、その先にあるものを読み取ってほしい作品です。

予告編

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