作品紹介
【監督】足立紳
【出演】池川侑希弥/田代輝/白石葵一/松藤史恩/岩田奏/蒼井旬/坂元愛登/臼田あさ美/浜野謙太/新津ちせ/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 高崎瞬は、地方の町に住む小学生。乳がんで乳房を切除した母と、だらだらした父、無邪気な妹の4人家族。瞬は学校の仲間と悪巧みをしていたずらをする日々だったが、仲間の一人がいじめとカツアゲにあっていることを知り、仲間の関係が徐々に変わっていく。
サブスクで観る
小学生の悪ガキストーリーではありますが、むしろこの小さいような広い世界を描いた良作
足立紳監督は、学生時代に脚本監督をした「荒野のホットケーキ」を制作し、その後、相米慎二監督などの助監督を務め、2014年「百円の恋」の脚本で高い評価を得て、2016年「14の夜」で監督デビューをしています。その後、脚本や監督をし、テレビや映画など、幅広く活躍している監督です。
池川侑希弥は、2019年にジャニーズ事務所に入所し、2020年、関西ジャニーズJr.内ユニット・Boys beのメンバーとなります。テレビやドラマで活躍をし、2023年「雑魚どもよ、大志を抱け!」で映画初出演初主演をしています。
キャッチコピーは「すべての弱虫たちに花束を。」
物語は、1988年の日本の小さな町が舞台。そこで暮らす小学生の主人公が、日々仲間といたずらなどをしえ過ごしているうちに、仲間がいじめやカツアゲにあっていることで、仲間同士で亀裂が生まれ始めるストーリーです。
序盤から、学校の明日から夏休みが始まる下校風景が描かれ、自宅に帰ると、母と息子の瞬が塾に行くか行かないかで口論しているところが描かれます。
主人公は高崎瞬ですが、中学受験で進路を悩みながらも、学校の仲間たちとつるんでいる方が楽しい時期となります。
時代背景は、1988年となっており、PCエンジンやヤンキーなど、昭和感がまだ残る時代感があります。
お寺で賽銭を盗み、駄菓子屋でお菓子を食べ、小学校ながらのやんちゃっぷりで日々の生活が描かれます。
地方の町でのノスタルジーのある生活感のある風景が描かれ、この4人の仲間たちのちょっとクソガキ感のあるやんちゃっぷりで綴られています。
仲間のとかげという相性の子が色々と問題を抱えているような感じがあり、いじめなどもある環境があります。
学校の風景も昭和感の名残があるところがあり、色々いたずらをしながらも、叱られ、人格や家柄も指摘されるようなコンプライアンスのかけらもない社会ですが、ちょっと昔の日本はこんな感じなところがあります。
主人公 瞬の視点で描かれつつも、仲間との関わりがあり、この小さな町での出来事を描いていきます。
テストの返却も、各自のコメントを先生が言いながら返すところも昭和感です。
「映画連れて行ってよ、サイクロンZ」
なかなかチョイスが良いです。というか、当時のジャッキー・チェン映画は人気が高かったので、観たがるのもわかります。
友達に映画好きな西野が登場し、そこから映画の話が広がります。
「あ、でもホントはスピルバーグよりコッポラのほうが好きなんだよね」
西野の映画の造詣は、なかなか渋いなぁと思いつつも、こういうちょっとみている世界が広い子は身の回りにもいた人が多いと思います。
地獄トンネルと言う使われていないトンネルがあり、ここでの逸話は、かんとくの制作する映画の題材にもなっていますが、この伏線がしっかりといい味となっています。
中盤で、仲間のかんとくが、カツアゲされているところを目撃し、そのことを大人に言うべきか言わないべきかで瞬は悩みます。
「で、でも、かんとくは仲間だろ」
仲間を想うところと瞬のどうしようもないところから、西野(かんとく)は転校してしまうところがあります。
「おとなになっても、自分のこときらいなんて惨めだからさ」
序盤で、口うるさい印象の母親ですが、病院で話をしているときに、母の気持ちがしっかりと息子に通じているようなところがあります。
かんとくがカツアゲされていたことが原因で、徐々に高校生のヤンキーグループから、かわりにお金をせびられます。
終盤は、仲間のためにヤンキーらに呼び出され対決となっていきますが、田舎のヤンキーとの争いに立ち向かっていきますが、これも仲間を思う気持ちからくるところです。
小学生や高校生らとの争い事で喧嘩騒ぎとなりますが、どこか幼稚なところにも思えます。
でも、小学生からみれば中学生や高校生は充分に恐ろしい相手でもあるのはわかります。
「俺は、強ぇえものの味方だよ」
小学生のときの友達の出会いと別れを描きながら、忘れられない友達のことをサラッと描いており、誰しもが共感できるのでは?と思います。
小学生の悪ガキストーリーではありますが、むしろこの小さいような広い世界を描いた良作です。