作品紹介
【監督】セリーヌ・シアマ
【出演】ジョセフィーヌ・サンス/ガブリエル・サンス/ニナ・ミュリス/マルゴ・アバスカル/Stéphane Varupenne/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 ネリーは、祖母が亡くなったことで、祖母の住む家に移り住む。家の裏にある森で、マリオンという少女と出会う。
主人公目線は、ネリーでありながらも、本当の主人公は他にあることに気付かされます
セリーヌ・シアマ監督は、イタリアの監督で、2007年「水の中のつぼみ」で長編映画監督デビューしており、第60回カンヌ国際映画祭のある視点部門に出品しています。2011年『トムボーイ』も高い評価を得ており、2019年「燃ゆる女の肖像 」では、カンヌ国際映画祭脚本賞・クィア・パルム賞受賞をしています。
ジョセフィーヌ・サンスとガブリエル・サンスは、双子の姉妹であり、2022年「秘密の森の、その向こう」で映画デビューをしています。セリーヌ・シアマ監督からの「本当の姉妹で撮影したい」という要望より出演しています。
物語は、祖母の住んでいた家に引っ越すも、母が祖母の喪失のために、家を出ていってしまう。父と娘の2人で生活をするが、娘はある日、裏の森で不思議な少女と出会う。
序盤から病院でネリーが病院で挨拶して回るシーンから始まります。
説明がされていないようですが、祖母が病院で亡くなり、その片付けのシーンから始まっていることになります。
祖母の住んでいた家に引っ越しをするわけですが、その暗闇で壁により掛かる母はちょっと怖いです。
主人公はネリーというところになるので、母の気持ちには感情移入しないような感じとなっています。
だからこそ、母の祖母を亡くした喪失感が客観的にしか見えないので、急に家を出ていってしまうのも理解は難しいところになります。
ネリーは、森の中でと母と同じ名前を持つ8歳の少女マリオンと出会うのですが、そもそも、どこかでこの祖母の家の周辺の世界には通常の世界とは異なる印象があります。
ツイン・ピークスのブラックロッジとホワイトロッジのような感じも受けますが、鏡写しのようなその世界の間を行き来するネリーに不思議な感覚を覚えます。
言葉や説明が少ないのですが、なんとなく、節々に関連性が見え隠れします。
カット割りにも特殊なところがあり、時間軸がどのような流れなのか、一瞬迷うところもあります。
マリオンとネリーの家がおなじ作りになっていることで、そこに本作の行間が生まれているとも思えます。
この秘密の森に気づいてしまうネリーですが、つまり、祖母と母と私の3世代の記憶をたどる物語であることがわかります。
ネリーとマリオンがほぼ同じような髪型と同じような服を着ているところに深い意味があるのかもしれません。
ネリーが母の記憶をたどっていくという物語と考えるのが良いとは思いますが、主人公目線は、ネリーでありながらも、本当の主人公は他にあることに気付かされます。
それは、最後の言葉にもなりますが、その言葉をしっかりと確認するのが良いです。
73分という非常に短い時間ながらも、卓越した演出で、心の描写を垣間見せる手法はとても良くできています。
小品な作品にも思えますが、無駄のない良作でもあります。