作品紹介
【監督】岸善幸
【出演】有村架純/磯村勇斗/若葉竜也/マキタスポーツ/石橋静河/北村有起哉/宇野祥平/リリー・フランキー/木村多江/森田剛/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 阿川佳代は、前科者の社会復帰をサポートする国家公務員の仕事 保護司を初めて3年となる女性。担当する前科者 工藤誠は、仮出所で物静かに更生生活を送っていたが、とある連続殺人事件が発生したことで、問題が起こっていく。
サブスクで観る
本作のドラマ版を見てからのほうが、本作の言いたかったことをしっかりと理解できるところはあります
岸善幸監督は、テレビ制作会社 テレビマンユニオンで是枝裕和監督と同期の演出家で、主に映画監督というよりも、構成や演出、プロデュースを行っています。
有村架純は、2010年に『ハガネの女』でドラマ初出演をし、その後、連続テレビ小説 『あまちゃん』で小泉今日子演じる主人公の母親の若かりし頃を演じて人気となり、高感度の高い役者です。
磯村勇斗は、高校の頃から役者を志し、2015年『仮面ライダーゴースト』でレギュラー出演を果たしています。その後、2017年「ひよっこ」では主人公の結婚相手となる役を演じています。2022年第45回日本アカデミー賞で、『ヤクザと家族 The Family』と『劇場版 きのう何食べた?』で新人俳優賞を受賞し、今後が期待できる俳優です。
物語は、前科を持つ人を補佐する保護司の主人公が、普段はコンビニでアルバイトをしながらも、社会更生をしようとする男性の補佐をしながらも、とある事件に巻き込まれていくストーリーです。
序盤は、主人公 阿川佳代の保護司としての生活が描かれます。
国家公務員でありながらも、非常勤ではあり、報酬が発生しないこの仕事をしている理由は後々描かれますが、社会復帰をしようとする人を支えていく姿が描かれます。
嘘をついたり、都合の良いことを言う前科者に対しても、きっちりと更生してもらうように都度面会を行っていきます。
その幾人かいる中の前科者の一人 工藤誠が登場してから、本作の中心となる展開となっていきます。
工藤誠を演じる森田剛は、6年ぶりの映画出演ではありますが、役者としてなにか開眼した感があり、有村架純と森田剛の演技で、グイグイと物語に引き込まれていきます。
工藤誠の耳の悪いところは、イヤホンを使いながら本作を観ると、その時の耳の音がわかるような気がします。
中盤から佳代の過去のことも描かれ始め、そのことで、なぜ佳代が保護司をしているのがわかります。
「仕方ないよね」
過去に犯してしまった事件をずっと引きずって行く人生に対して、何に向き合って生きていくのかということがメッセージとして込められているのかと思います。
「人殺しは人間じゃない」
刑事役のマキタスポーツもぴったりなポジションであり、どこか割り切った言動が妙にリアルな感じがします。
工藤誠は兄弟のためにもとに戻れないかもしれない選択をしていくことになりますが、それに対して保護司が何をできるのか?ということに後半の注目できるところです。
「あのラーメンが食べたいです。」
このときのシーンはとてもグッときます。
「これ以上被害者をうんではいけない、これ以上加害者をうんではいけないの。」
保護司として更生しようとしている人の支援をするわけですが、一度問題を起こしている人をどうやって更生に導くのかはとてもむずかしいことにも見えてしまいます。
「それが現実です。」
もう、このシーンは観てもらうほうが良いです。
本作は創作ではありますが、創作を超えるような訴えかけるところがあります。
ドラマ版から生まれた、本映画でありますが、ドラマ版を観ていなくても大体のことは理解できる仕組みになっています。
ただし、本作のドラマ版を見てからのほうが、本作の言いたかったことをしっかりと理解できるところはあります。
どこまでも人の良心を信じていこうとする有村架純演じる阿川佳代がどのような経緯で保護司となったのかというところをしっかりと理解してほしいところです。