作品紹介
【監督】竹中直人/山田孝之/齊藤工
【原作】大橋裕之
【出演】吉岡里帆/鈴木福/満島真之介/柳ゆり菜/南沙良/安藤政信/ピエール瀧/森優作/九条ジョー/木竜麻生/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】蒲郡市を舞台として、そこに住む様々な人たちを描いた作品です。
サブスクで観る
観る人をとんでもなく選んでしまう怪作ですが、とんでもない魅力がつまった作品
竹中直人監督は、学生時代から8ミリ映画の制作を行っており、その後、コメディアンとして活動を開始し「笑いながら怒る人」は代表ネタとなっています。1991年『無能の人』で映画監督デビューをしており、主演としても出演しています。その後、「普通の人々」「119」「東京日和」等を監督しています。
山田孝之監督は、1999年『サイコメトラーEIJI2』で俳優デビューをし、2003年『WATER BOYS』でテレビドラマ初主演をしています。2005年『電車男』で映画初主演をし、その後ヒトクセある性格俳優として、様々な作品に関わっています。
齊藤工監督は、高校時代よりモデルとして活動をし、2001年「時の香り~リメンバー・ミー」で俳優デビューをしています。2012年には「サクライロ」で監督デビューをしており、2017年「blank13」では、第20回上海国際映画祭でアジア新人賞部門最優秀監督賞を受賞しています。
「石鹸の香り」「アルバイト」「秘密」「父」 を竹中直人監督、「WinterLove」を山田孝之監督、「伴くん」「おっぱい」を齊藤工監督が手掛けており、「オサムをこんなうさんくさい道場に通わせたくありません」は、3人の監督の共作となります。
多数の俳優が出演しており、7本の物語それぞれに微妙にリンクをするような流れで、構成されています。
物語は、とある町を舞台としたオムニバスの要素もある作品で、複数の物語を1本にまとめたストーリーです。
序盤からとある誘拐事件が描かれますが、そこから家族の娘と祖父の会話から始まります。正直掴みどころが無いのですが、意外にも興味が沸かない沸かないわけではなく、むしろ、この不思議な雰囲気と空気感が本作の魅力かもしれません。
秘密についての会話は興味深く、実は本作のわかりやすい主題でもあります。
「230個」
この数字からのタイトルとなるわけですが、タイトルの登場のさせ方は、唐突でもあり、そもそもタイトルの意味にはなんとなく意味深な要素もあり、たったこれだけのことですが、タダモノではないような映画の雰囲気を感じます。
ちなみにこのシーンでは、色々と布石がすでに用意されています。
タイトルのあと、また場面が転換し、自転車で旅に出る人と、その隣に住む人のシーンに変わります。
これもまた違った話となり、とある本が一瞬映り、場面が変わりますが、このちょっとした小道具も、本作の各々の物語のリンクとなっていたりします。
そんなちょっとずつ関わりのある要素が、7本の物語の絡み合い方を示しています。
なんとなく、ロバート・アルトマン「ショート・カッツ」を感じるところがありますが、それぞれの物語自身は、本作のほうが不条理感があるので、この不思議な感じを楽しむのが本作の魅力です。
むしろ、このなんとも言えない不条理で些細なことの積み重ねが楽しめるかで、本作の評価が変わります。
また、物語がどの方向に進むのかも予測できない点は、妙に引き込まれる感じがあり、この点にハマれるかで、評価の変わってくるところかと思います。
特に「伴くん」のエピソードのぶっちぎり感が凄く、このキャラクター設計はとんでもない感じがします。
そこから、幽霊のような女として登場する松井玲奈でブッチギリに名作感のある迷作として記憶に残るところがあります。
「ま、そんなことの繰り返しだぜ」
こんな小ネタと不条理感の積み重ねの作品に、普通に観れば、「何が言いたいのかわからない」となるところですが、回り回って「秘密」というキーワードが浮かび上がってくるところに、強引感もありながら、素晴らしい取りまとめとなっています。
観る人をとんでもなく選んでしまう怪作ですが、とんでもない魅力がつまった作品ともいえ、こういう映画はそうそう作り上げることのできないように思います。
メイキングをもとに制作した「裏ゾッキ」も本作をしっかり理解する上では観てほしい作品となりますが、人を選ぶ作品ではありますので、万人におすすめはしません。