【日本映画】「サマーフィルムにのって〔2021〕」★★★★☆【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【出演】伊藤万理華//小日向星一//篠田諒/
【個人的評価】

【あらすじ】主人公 ハダシは、勝新太郎を愛する高校3年生。映画部では、時代劇よりも恋愛モノを作り、時代劇を作っていなかった。ある日、凛太郎と出会い、武士役にピッタリということで、文化祭でゲリラ上映をする作品を撮り始める。

サマーフィルムにのって

97分で得られる観た人の感情と制作してくれた感謝はしっかりと受け取ってほしい作品

松本壮史監督は、CMやドラマなどの制作に携わり、2021年「サマーフィルムにのって」で映画監督デビューをしています。

伊藤万理華は、2011年より乃木坂46の一期生メンバーとして活躍し、2017年に卒業後は、俳優として映画やテレビ、舞台で活躍をしています。2013年「劇場版BAD BOYS 」で映画初出演をし、2015年「アイズ」で初主演を務めています。独特な雰囲気のある女優です。

主題歌は、Cody・Lee(李)「異星人と熱帯夜」 で、ちょっといい感じな曲です。

キャッチコピーは「私たちの青春は、傑作だ。」となっています。

物語は、時代劇ファンの主人公が映画部に所属するも、恋愛モノばかり撮影していることで、不満を感じる中、とある男性と出会い、武士役に抜擢するも、その男性にはとある秘密があったというストーリーです。

序盤より、映画部の制作するラブストーリー「大好きってしかいえねーじゃん」という映画のパイロットフィルムから始まり、本作の主人公のハダシの趣向とは異なるのがわかります。

ハダシの作家性は時代劇でちょっと信念が異なることが、本作のはじめから理解しておくポイントになります。

くぅぅうというときの白目感は良いです。

「雷蔵は美しすぎるんだよね」

なんとなく「映像研には手を出すな」的感じを受けますが、そういう視点でも別に間違っていないです。

「ハダシ」「ビート板」「ブルーハワイ」「ダディボーイ」とあだ名が出てきますが、こういうところも良いです。

映画製作費を賄うために、バイトをしたりするところは、本作の目的達成の横道ともなりますが、こういう学生ならではのところはなかなか良い感じです。

「この夏の間だけ、みんなの青春ちょうだい。」

「え、このシーンドローン使って撮る必要ある?」

2つの映画製作チームの温度差がなにげにコメディ感となりますが、こういうゆるいところから、映画製作の作家性の違いは、サクッと受け入れておけば良いです。

「ネフリとか知らないの?」

「武士の青春」ということに打ち込むハダシの熱意は、ちょっとここまで観ていくと、とても感化されそうになります。

中盤から、凛太郎がなぜこの世界にいるのかがわかります。

「世界終息していないからパラドックスは起こってない」

SF要素があるように見えますが、別にそういう考察は必要なくて、「サマータイムマシーンブルース」のようなゆるいSF考察で良いのです。

「2時間って俺、寝ちゃうんだよな。」

本作とは関連のないところですが、一般的に映画の上映時間自体が約2時間あり、その作品を鑑賞する時間を節約する視点から「ファスト映画」なるものが一部存在しますが、やはりこの手法では、作品の意図も理解できず、むしろ作品の存在意義が否定されているとは思います。

コンテンツ過多なのは非常によくわかりますが、必要なカルチャーは未来に残されるわけであり、名作も残り、現代の今のこの時点からも、名作や傑作は残るわけです。

でも、その判断基準とは何なのか?と考えると、鑑賞経験から生まれるところもあり、読解力や観察力を培うことに、「時短」という方式は、なんの意味も持たないところはあります。

文化的作品の存在の意義は、自身が体験したことで感じたことが、自身の感性にもつながるわけで、時短で体験したことで作品数を増やしても、考える時間も演出意図も汲み取れないようでは、なんの経験にもならないとおもいます。その文化を作り上げているのは、クリエイターでもありますが、受け手にも文化を作る権利はあるということを、鑑賞側にも持ってもらいたく、作者に対する礼儀は守って欲しいとは思います。

コント的なところとしては、映画部のほかのチームの作品の作風が間逆なところでもあり、この点では、実は真逆なところに妙な布石があります。

「わたしたち、あんたらには負けない」

徐々にこういう盛り上がりのあるような要素が埋め込まれていきますが、学生だからこそ体験するそういう経験は、あとにも先にもこの年代しか生まれてこないところはあります。

「さようならって言わない」

ハダシの監督としての映画製作の打ち込む気持ちは、本作を通じてとても魅力的に感じます。

麟太郎と過ごす文化祭には、これもまたグッとします。

「一目惚れだったからね。いや、猪太郎としてね」

ハダシと麟太郎の心の通わせ方も、このタイミングで起こるから良いのであって、映画の上映の前の気持ちの整理はここで十分ついているように思います。

「なんか、やっぱり、このラストシーン違うなって。」

「わたし、とんでもないヤツなんです」

ここからスタッフ全員動くところはちょっと泣けます。

あとは観て感じてほしいところはあります。「ファスト映画」では得られない鑑賞時の感情が得られると思います。

こういう映画の舞台裏とその気持の動き、そして、青春というところはやはり青臭いけど、気持ちの良いものです。

「きっと、未来へつなげてくれる」

97分の作品ですが、97分で得られる観た人の感情と制作してくれた感謝はしっかりと受け取ってほしい作品です。

予告編

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