作品紹介
【監督】瀬々敬久
【原作】椰月美智子
【出演】菅野美穂/高畑充希/尾野真千子/外川燎/柴崎楓雅/阿久津慶人/和田聰宏/大東駿介/山口紗弥加/山田真歩/水崎綾女/藤原季節/真行寺君枝/渡辺真起子/菅田俊/烏丸せつ/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】石橋留美子は2人の子供がいる43歳のフリーライター、石橋加奈はシングルマザー、石橋あすみは家族3人の専業主婦。その3人には「石橋ユウ」という子供いるという共通点があった。
サブスクで観る
スイッチの入る瞬間が本作の演出にはあり、その点をしっかりと感じ取れれば
瀬々敬久監督は、学生時代に自主映画制作を行い、ポルノ映画を制作をしながらも近年では話題作を制作するようになり、意欲的に映画制作を行なっている監督です。
菅野美穂は、1992年、中学3年生の時に「桜っ子クラブさくら組」のオーディションに合格し、芸能界デビューしています。1993年「ツインズ教師」で女優デビューをし、1995年「大失恋。」で映画デビューをしています。2013年に堺雅人と結婚しています。
高畑充希は、幼いころから役者に興味を持ち、2005年『山口百恵トリビュートミュージカル プレイバック part2 ~屋上の天使』のオーディションに合格し、女優デビュー、その後2016年朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で主演を演じ、安定した人気のある女優です。
尾野真千子は、14歳のときに映画監督河瀬直美の目に止まり、1997年「萌の朱雀」で映画主演でデビューしています。その後、様々な作品で活躍しています。
本作は、菅野美穂が10年ぶりに映画主演となる作品です。
原作は、椰月美智子による長編小説です。
主題歌は、tokyo blue weeps「Motherland」です。
物語は、石橋ユウという同名の子供を持つ3人の母親。境遇や場所も違い、関係もない3人でしたが、そのうちの1人の石橋ユウが母親に殺されてしまうストーリーです。
序盤から3つの家族の生活が描かれます。
「母と息子のシングルマザーの高畑充希演じる家庭」「夫婦共働きをしている菅野美穂演じる家庭」「裕福そうに見えながらも専業主婦なりの悩みを抱える尾野真千子演じる家庭」と三者三様の生活が描かれます。
序盤で心奪われたのは、高畑充希演じる家庭で、シングルマザーながら、日々苦労をして生活をしていることが描かれます。
コンビニ、クリーニングと仕事を掛け持ちしながら、何かのためにお金を貯めている姿が描かれます。
高畑充希の大阪弁はホント上手いです。
「ひとりのときのオカンが、死ぬほど疲れた顔をしています。」
こういう苦労を重ねている様は、他の家族と違い、金銭面での不自由があり、他の家族も、夫婦の不自由、親子の不自由と様々なところが描かれます。
「こっから出ていけぇ」
中盤過ぎにこの3つの話がとてもすごいザッピングで演出となります。ここのテンションは高すぎます。
それぞれの家庭にそれぞれの問題が起こり、それはそれぞれが関係性を持つことなく、ストーリーが進んでいきます。
「あんたのこと、べつに馬鹿にしてるわけちゃう」
このシーンの高畑充希はとても良いです。
母親は母親なりの苦労があり、それぞれの息子の「ユウ」に対して、それぞれの悩みが描かれていきます。
「ずるいよ、ごまかすな」
この子供の発言もちょっとグッときます。
ちょっと複雑そうな物語にみえますが、誰にでも起こり得る事件であるとも書かれており、ちょっと重たいような印象ですが、しっかりと訴えてくるような作品です。
似たような作品に瀬々敬久監督の「最低。」がありますが、本作は、倫理指定が多少ゆるく指定されているので、色々な人に観てもらえる作品ではあります。
「息子を殺したのは、私ですか?」というコピーが本作にはつけられていますが、殺したという意味合いで言えば、3人ともにそれが当てはまるところもあります。
このコピーについては確かに事件が発生していますが、想定とは異なる結末が描かれていくところはあります。
物語としては、重みのある作品であり、気楽に観られる作品ではありませんが、スイッチの入る瞬間が本作の演出にはあり、その点をしっかりと感じ取れれば良いと思います。