【監督】安彦良和
【原作】矢立肇/富野由悠季
【出演】古谷徹/成田剣/古川登志夫/中西英樹/池添朋文/新井里美/潘めぐみ/福圓美里/武内駿輔/
【あらすじ】ジオン公国と地球連邦軍が交戦状態となった1年戦争時の宇宙世紀0079年が舞台。地球連邦軍の心臓戦艦ホワイトベースのクルーのアムロは、とある任務で、通称「帰らずの島」へと赴く。
ファーストガンダムの作品を新たに描きなおしたという点では、多くのファンに観てもらいたい作品
・安彦良和監督は、アニメーターとして活躍し、『宇宙戦艦ヤマト』『勇者ライディーン』『超電磁ロボ コン・バトラーV』『無敵超人ザンボット3』『機動戦士ガンダム』など、多くの作品に関わります。1983年「クラッシャージョウ 」でアニメ映画監督としてデビューをし、以降「巨神ゴーグ」「アリオン」「ヴイナス戦記」などを手掛けています。1989年頃から漫画家としての活動を始め、2001年には『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を10年間連載しています。2015年「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」でアニメ映画監督して復帰をし、精力的に、アニメや漫画を生み出している監督です。
・富野由悠季は、虫プロダクションで制作進行に関わり、後に演出もおこなっています。絵があまり上手くないところがあり、その点から誰よりも絵コンテを早く作成することを極めたと言われています。フリーの演出家として活動を始め、非常に多くの絵コンテを手掛けています。1972年「海のトリトン」で監督を努め、『勇者ライディーン』『無敵超人ザンボット3』『無敵鋼人ダイターン3』と作品を手掛け、1979年には、『機動戦士ガンダム』の総監督・原作・脚本・演出・絵コンテ・作詞を務めています。1980年『伝説巨神イデオン』を手掛けていますが、打ち切りとなりますが、熱狂根的なファンの声から後に『THE IDEON 接触篇』『THE IDEON 発動篇』を制作し、非常に高いクオリティの物語を描いています。前年の1981年に『機動戦士ガンダム 劇場版』を手掛け不動の人気となっています。アニメ作品ながら、絵に演技をさせるということを踏まえた巧みな演出は、アニメ界では随一の才能のある監督です。
・矢立肇は、サンライズのアニメーション作品企画部が使用しているペンネームで、実在する人物ではなく、版権管理のための名称となります。ただし、1980年前半頃に使用され始めた当時は、サンライズの山浦栄二のペンネームだったようです。同様のペンネームを利用している名前の例としては、「八手三郎(スーパー戦隊シリーズなどで使用)」「東堂いづみ(プリキュアなどが有名)」「シブサワ・コウ(コーエーのゲームで使用)」「葉村彰子(水戸黄門などで使用)」「音羽たかし(キングレコードで使用)」などがあります。
・物語は、機動戦士ガンダムの作品中の1話を丁寧に演出した作品となり、主人公のアムロがとある島を偵察中に出会った一人の男 ククルス・ドアンの生き様を通じて、戦争や戦う意義を示した作品となっています。
・機動戦士ガンダムの第15話「ククルス・ドアンの島」のリメイク作品であり、当時のTV版ガンダムの物語の中では単独した1話の物語でもあります。
・そのため、「劇場版 機動戦士ガンダム」では全面カットされた話となり、作画自体もあまり完成度の高くないいわゆる「作画崩壊」している話として知られています。
・なお、ドアンが搭乗するザクの作画も、妙に頭身が変な印象もあり、これはこれで独特な印象があります。
・またトンデモ演出も多く、ルッグンにぶら下がって飛んでくるザク等、色々とモヤモヤするところが多い珍作です。
・そんな1話をクローズアップして映画としてリメイクしている点には深い意図は感じます。
・特に、アムロの視点を通じて、戦うことの意義と戦争の悲劇が根底に描かれている点では、ガンダムという作品を象徴するテーマとも思えます。
・「作画崩壊」した部分を作画崩壊した状態として、現代風にしっかりと描きなおしており、当時の作品を全面肯定しつつ、ガンダムの重要なスタッフだった安彦良和監督が、描きなおしたことに相当な意味を感じます。
・なお、安彦良和監督の演出はどちらかといえば、本作のような動きやコミカルさが基本であり、「機動戦士ガンダム」でみせたシリアスな印象は、あまり反映されていません。これは作画監督と監督との立場の違いから生まれているところかもしれません。
・個人的には、正義感と体格ががっしりしているアムロ像はちょっと違うかなあぁという気もします。
・卑屈さや内向的なところがアムロにはあるように思いますが、それは富野由悠季演出でのアムロのような気がします。
・とはいえ、ファーストガンダムの作品を新たに描きなおしたという点では、多くのファンに観てもらいたい作品かと思います。