作品紹介
【監督】石原貴洋
【出演】坪内花菜/田中しげこ/仁科貴/前野朋哉/林海象/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 ちほは、おばあちゃんと暮らす12歳の少女。2人で生活をしているが、生計を立てているのはアパートや文化住宅の家賃収入で、足の悪くなったおばあちゃんのために取り立てを始める。
サブスクで観る
とてもまとまった作品でもあり、大阪という地域性も含んでなかなか良くできた良作
石原貴洋監督は、は、2006年『水曜日のスイミング』で 第3回 シネアスト・ オーガニゼーション・大阪エキシビションオープンコンペ部門入選し、その後、2010年「VIOLENCE PM」で長編映画デビューし、大阪を舞台にした作品を複数制作しています。
坪内花菜は、2016年『べっぴんさん』で 谷村美月演じる小野明美の幼少時代を演じて評判となり、以降映画やテレビドラマで印象に残る演技をしています。
本作では、坪内花菜が初の主演作品となっています。
物語は、12歳の少女がおばあちゃんの代わりに、所有しているアパートや文化住宅の家賃の取り立てを始めるが、多くの住人の生活はあまりいい生活をしている人たちではなく、取り立てをしていく中で、様々なことをちほが経験していくストーリーです。
序盤は、主人公 ちほの独白のような形で、その周辺の環境と、取り立てっぷりをテンポよく描いています。
面白いのはやはり主役のちほの言動であり、流暢な大阪弁とそのノリは、観ていて清々しいです。まあ、大阪育ちの子だと思いますので、大阪弁ネイティブなのは当然ですが、子役の演技のわりに、自然過ぎてとても良いです。要所要所で、変顔をするところがありますが、この顔芸についても、坪内花菜の魅力なのかと思います。
12歳の子が取り立てをしていくところが面白く、まるで漫才のようなテンポでサクサクと物語が進んでいきます。
当然、かなりな貧困生活や裏社会に通じていたりと、色々な人々が登場してきます。そのヒトクセもフタクセもあるような住人たちとの物語が中盤まで続き、非常にテンポが良く、その取り立てのテンポと喋りが面白いです。アドリブなのかとも思われるそのテンポがとても良いです。
中盤以降は、裏社会の人たちも登場してくるので、多少ヤクザ的な物語も絡んできますが、ちほの言動が一歩も引いていないところから、序盤のテンポを維持したまましっかりと物語が描かれます。
よくよく思えば、「じゃりんこチエ」のチエちゃんのようなキャラクター性があり、これが魅力なのでしょう。
ロケ地は、「山王市場通商店街」が映るので、大阪市西成区周辺の物語となりますが、実際にこの周辺はこんな感じの場所なのでしょう。リアリティがあるように思います。
多くの登場人物が出てきますが、主役がしっかりと立っており、それを中心として物語が動いているので、展開を見失うこともないかと思います。
全体的な展開はわかりやすくできているので、サクッと観ることができ、序盤で出てきている住人にもしっかりと伏線がはられているところも良くできています。ラストシーンの顔芸もまた、なかなか良いカットとなっており、坪内花菜の魅力が詰まっています。
エンドロール以降も多少物語があり、しっかりと最後まで観るのをおすすめします。
97分という内容ですが、とてもまとまった作品でもあり、大阪という地域性も含んでなかなか良くできた良作です。