【監督】是枝裕和
【出演】福山雅治/尾野真千子/真木よう子/二宮慶多/黄升?/ピエール瀧/田中哲司/國村隼/井浦新/夏八木勲/樹木希林/リリー・フランキー/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 野々宮良多は、購入マンションに住む裕福で不自由のない生活を家族3人で送っている。ある日病院からの連絡で、6歳になる息子が病院で取り違えられていたことがわかる。取り違えた相手の斎木夫妻は、子供を手放すことに悩むが早い方が良いということで、お互いの子供を交換する。
キャスティングは、わかりやすいところはありますが、物語の伝えたいことを考えると、なかなか答えの出せないところがあり、観賞後に考えさせられる作品
是枝裕和監督は、ドキュメンタリー出身の監督であり、海外でも高い評価を得ている監督です。デビュー作「幻の光」では、第52回ヴェネチア映画祭でオゼッラ賞、その後、「誰も知らない」で第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞で柳楽優弥が受賞しています。
福山雅治は、18歳で上京し、映画「ほんの5g」で俳優デビューをしています。その後、1990年『追憶の雨の中』でミュージシャンとしてデビューしています。俳優とミュージシャンの両方で成功している稀な人でありながらも、気さくで真面目なところに絶大な人気のある人です。
第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員を受賞しています。
物語は、裕福な家庭の主人公家族と下町に住む家族との間で、子供の出生時に取り違えが発覚し、それぞれ正しい子供を取り替えて新しい生活をしようとするストーリーです。
序盤は、野々宮家の生活が描かれ、都内のタワーマンションに住み不自由の少ない生活を送っている姿が描かれます。
子供の取り違えということが発覚し、正しい血縁の元に子供を戻そうとしますが、子供の立場から考えるとやはり割り切れないところが出てきます。
同じく、親の立場からも今まで育ててきた子供も愛情を考えると、やはり思い悩みところが出てきます。
物語は、野々宮良多の視点から主に描かれるところがありますが、是枝映画としてのシナリオは綿密には用意されていなかったと思われます。
各プロットは、大筋がありますが、多くの部分は、アドリブも込められた内容となっているかと思います。
2004年の是枝監督の「誰も知らない」でも、子役の演技の多くはその場のアドリブに託されていたところもあり、この辺りが是枝監督作品の持つリアリティでもあります。
ドキュメンタリーのような流れで描かれるため、過剰な演出がないぶん、創作映画とはちょっとテイストが異なるところも多く、ここに是枝映画の魅力があります。
脚本は存在しながらも、多くの演技にその場のリアリティがあるので、そのディテールに説得力が生まれています。
子供を取り違えたというところで、親も苦悩しますが、当然子供も今までの親とは異なる親元で過ごすということで、子供の考えでは、理解しづらいところも出てくるかと思います。
その要素の多くは言葉では明確に説明されませんが、行動や表情でそれが描かれてきます。
まさに行間を読み取るような映画ではありますが、それほど理解しづらい作品ではないところが、本作に優れたところです。
最終的には良多の主観に近いところで結論が描かれてきますが、円満なところではなく、余韻が残されているところにも、本作のメッセージ性があります。
キャスティングは、わかりやすいところはありますが、物語の伝えたいことを考えると、なかなか答えの出せないところがあり、観賞後に考えさせられる作品ではあります。