【洋画】「恋する惑星〔1994〕」★★★★★【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【出演】トニー・
【個人的評価】

【あらすじ】麻薬取引に関わる謎の金髪女性、恋人に振られた警官223号、警官223号が立ち寄る小食店の新入り店員フェイ、恋人とのすれ違いをしている警官663号の4人の人物を中心にした物語。

恋する惑星 (字幕版)

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観るたびに新しい発見があるような密度の濃い傑作香港映画

ウォン・カーウァイ監督は、学生の頃にグラフィックデザインを学び、その後脚本家としてデビューしています。1988年『いますぐ抱きしめたい』で長編監督デビューをし、続く1990年の「欲望の翼」で、の撮影によるスローモーションや手持ちカメラを用いた躍動感あふれる映像で注目をされています。

トニー・レオンは、香港の俳優で、TVで主に活躍していましたが、映画界に転身し、様々な作品で活躍しています。2000年『花様年華』で香港人として初めてカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞しています。

フェイ・ウォンは、北京生まれで、高校卒業後、香港に移住し、オーディションを経て、歌手デビューしています。

物語は、香港の街に住む男女4人の物語ですが、大きく分けて2つの物語の構成となっています。

それぞれのパートに登場する人物はものすごくわからないレベルで、それぞれ登場しています。

この2つの物語の構成は、本来もう一本存在していたところがありますが、本作ではカットされ、のちに「天使の涙」としての映画化されています。

前半の話は警官と麻薬取引に関わる女性の物語。

特筆すべきは、序盤でのナレーションと観たこともないような流れるような映像。

コレは撮影監督のアンドリュー・ラウが生み出した撮影技法ともいうべきところで、周囲は流れるような映像ながら、被写体自体はくっきりと映っている点。この夢や瞑想のような印象のある映像は美しいところがあります。

なお、前半が「アンドリュー・ラウ」、後半が「クリストファー・ドイル」が撮影を行っています。

さらに細かいカット割りで、ヨーロッパ映画のような点も雰囲気がよく、時計が切り替わるところのカットはトンデモなくセンスを感じるところです。

その後のセリフ「その時、ふたりの距離は0.1ミリ 57時間後、彼は彼女に恋をした。」ここまでの流れは最強すぎるほどでもあり、未見の人にはオススメしたいところです。

前半の物語は、ブリジット・リンに感情移入しづらいところがあり、人を選んでしまうかのしれないですが、金城武が好青年すぎるので、良しとしてください。

なお、このブリジット・リンの風貌は、1980年の映画「グロリア」を意識させるところもあり、クールで魅力がありながらもミステリアスというところをうまく演出しています。

ぶった切るように後半の物語が始まりますが、この時も前半の対比として、「その時、2人の距離は0.1ミリ。6時間後、彼女は別の男に恋をした」というナレーションが入り、同じような言葉のようで、まるで異なる内容で説明されます。

後半は、トニー・レオンとフェイ・ウォンの登場する物語で、この映画が名作たる印象を決定づけるのが、フェイ・ウォンの愛くるしいキャラ。

ベリーショートな髪型と引き込まれそうな瞳、そして小柄ながらもピタピタTシャツとダボダボパンツというところにコレでもかというピンポイントなカワイさが詰め込まれているように思います。

前半のブリジット・リンが、トレンチコートにサングラスというファッションを考えると、様々な衣装で魅力を振りまくフェイ・ウォンは、この映画のポスターとして使われるのもよくわかります。

台詞回しもしっかりと韻を踏むような対比形式の表現となっており、サラリと発せられる印象的な点は即興演出で知られるウォン・カーウァイ監督としては奇跡的な感じもします。

「1万年愛す」

「あと2分で25歳。俺は四半世紀を生きた。水分を流し、気分爽快だ。この歴史的瞬間に、俺は走る」

「パインは別れた恋人の大好物で、5月1日は俺の誕生日だ。もし、それまでに彼女が帰って来なかったら、恋も期限切れだ」

「部屋が感情を出し始めた、どうやらかなりの泣き虫のようだ」

「タオルが泣くのを見れてうれしかった」

感傷的で擬人的表現もあり、「運命」と「偶然」という要素を見事に混ぜ込んでいます。

また、使用される音楽も印象的であり、特に後半部分で使用される、ママス&パパス『夢のカリフォルニア』、フェイ・ウォン『夢中人』の楽曲は、香港映画のイメージに新しい風を吹き込んでいるようにも見えます。

特に「夢中人」は、アイルランドのバンド「The Cranberries」の「Dreams」のカバーでもあり、この「Dreams」はメロディラインが美しいこともあり、さまざまな映画の挿入曲に採用されています。

後半部分の物語は、フェイの可愛らしさが素晴らしいのですが、真面目に考えると、非常に厄介なストーカーでもあります。

ただし、自己完結型のストーカーでもあり、結末の付け方も、フェイが一歩先を行った展開となっているところに、悪質なストーカー感は中和されています。

ウォン・カーウァイの映画製作手法は即興での演出で知られていますが、即興とは言いながらも、しっかりとした韻の踏み方をしています。

「前半と後半の対比」「2人の警官」「2人のスチュワーデス」というように、事柄の対比をもとに物語が構成されておりま、さすがに即興というのも、疑わしい感じがします。

ともかく、後半のストーリーは本作の最も見てほしいところでもあり、撮影技法やシナリオ、楽曲の使い方や色彩等、今までの香港映画の印象を大きく塗り替えたことに間違いはない傑作です。

忘れた頃に何度も見返したくなり、観るたびに新しい発見があるような密度の濃い傑作香港映画です。

予告編

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