【日本映画】「blank13〔2018〕」を観ての感想・レビュー

【監督】
【出演】  
【個人的評価】

【あらすじ】主人公 コウジ は、兄ヨシユキと父と母の4人暮らしをしています。父 雅人は、400万円の借金があり、日々取り立て屋が自宅に押しかける始末だった。ある日、タバコを買いに行くと出かけたまま父は失踪してしまう。13年後、残された3人は過酷な生活の末に借金を返済し、平穏な暮らしをしてたが、父が胃ガンで余命3ヶ月と知る。

blank13

この曲を最後に持ってこられるところが、この映画のすべて

・俳優の斎藤工が監督を行った長編映画の第1作目。

・長編とはいえ、時間は、70分という時間でまとめられています。

・大きく物語は、2つに分けられており、タイトルバックの出るシーンを境に物語が変わります。

・前半は家族を内側から観た視点、そして後半は外部の人々から見た家族の印象となります。

・決して駄作とは思っていないのですが、どちらかといえば、小品と言った印象です。

・序盤、火葬と葬式のシーンが描かれます。同姓である松田家の葬式が隣のお寺で行われているという対比からも無残さがあり、物悲しさがあります。これも演出の妙でもあります。

・そこから子供の頃の話となりますが、その前に葬式に参列しない母親も描かれます。このときに映る指輪と手紙をさり気なく映すところも、父 雅人が「タバコを買いに行ってくる」と言って出かけた後にタバコとライターを映すシーンも、演出としてすべてを言い表すわけでもなく、サラリと描いています。

・それまで無口な兄も弁当を作っているシーンで心情が吐露されます。これも、くどくど説明をするわけでなく、シーンの積み重ねからの演出でつぶやいた一言だけでインパクトのある演出をしています。

・父親と子供の頃にやったキャッチボール。このことを記憶に残していることで、コウジは父親と会うのですが、このときにも外された結婚指輪が映っています。言葉ではなく、置かれた状況や持ち物で言い表すことをしています。

・屋上でのタバコを吸うシーンでも、2人の不思議な距離、そして、全てタバコを渡してその場を去る演出。きめ細かい演出だけで多くを語ってしまいます。

・この前半の演出の鋭さはとても素晴らしいです。

・後半はその逆が起こります。

・前半の鋭い演出とは変わり、後半は、父 聖人がどういう人物だったのかが、どういう13年間を送っていたのかが描かれます。

・言葉では描かなかった前半とは異なり、後半はすべて言葉で演出してしまいます。

・これが良かったのか良くなかったのかはわかりません。

・唯一、良いとわかるのは葬式に参列しない母の演出であり、吸えないタバコを吸うシーンやと手紙がさり気なく映るとこでしょう。

・駄目な父親だったのか、良い父親だったのかはわかりません。それは明確に描かない手法でもあります。

・言い表してしまうとダメになってしまう絶妙な感情という方が良いのかもしれません。

・最後のコウジの挨拶にはそういう気持ちがこみ上げます。

・エンディングの曲は、笹川美和「家族の風景」です。この曲は、 の曲です。

・「キッチンにはハイライトとウイスキーグラス どこにでもあるような 家族の風景 7時には帰っておいでとフライパンマザー どこにでもあるような 家族の風景」

・この曲を最後に持ってこられるところが、この映画のすべてかもしれません。歌詞然り、曲然り。


映画史上類を見ない、独自の世界観を描く。 blank13 DVD TCED-4190 〈簡易梱包

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