【日本映画】「茜色に焼かれる〔2021〕」を観ての感想・レビュー

【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】主人公 田中良子は、演劇を学んできた母親。旦那を交通事故で亡くして以来、息子とともに生活をしていた。コロナ禍で生活が苦しくなる中でも、たくましく生きる姿を描いた作品。

「ルール」という一本筋の通った作品ではあり、しっかりとしたメッセージのある作品

監督は、高校時代から映画監督を志し、大学の卒表制作で、2005年『剥き出しにっぽん』を監督して評価をされ、以降、「川の底からこんにちは」「舟を編む」など高い評価の作品を生み出しています。

尾野真千子は、14歳のときに映画監督の目に止まり、1997年「萌の朱雀」で映画主演でデビューしています。その後、様々な作品で活躍しています。

尾野真千子の4年ぶりとなる単独主演映画となっています。

主題歌は、GOING UNDER GROUND「ハートビート」となっています。なお、バンドの公式プロモーションビデオにはが出演しています。

物語は、苦境に立たされた母と息子の生活を描いた作品です。

脚本は、石井裕也監督が手掛けており、オリジナル作品となります。監督いわく、「愛と希望」をテーマにした作品となっているようです。一生懸命に生きるということが描かれている点と、コロナ禍ということを描いた点で、時代を鋭く描いた作品と思われます。

序盤から、夫を演じるオダギリジョーが事故死をしてしまうシーンから始まります。

この交通事故を起こした加害者は、某交通事故の暴走事件で娘と妻をなくした実際の事件から引用された感じもします。

そんな社会性を描きながらも、団地ぐらしの母と息子の生活を描いています。

ここまでが、オープニングであり、正直、ここまでの描き方で、傑作感を感じてしまうところがあります。

「人が死んでるんです。まずは、すいませんという謝罪があるべきではないんですか?」

母子家庭となってしまったことで、母としては何かが欠けてしまったところはあるかと思います。

当然、生活をしなくてはならないので、収入も大事となり、そのことで、様々な苦労をしながらも、息子を育てていく姿はとてもたくましく感じます。

「旦那のこと全部受け入れなきゃしょうがないでしょ。」

「そう信じたから結婚したんだよ」

序盤でサクッと事故に遭ってしまった父親も生前の行動が母子に受け継がれているのか、曲がったことに決して屈しないところは、本作の骨格にあたるところかと思います。

廃棄する花を自腹で購入する点には、良子のポリシーかと思うのですが、レジ精算という点で考えれば、自分の購入する商品を自ら精算する点はかなりモヤモヤします。疑わしいことは行わないほうが望ましいとは思います。

コロナ禍の世界を描いた作品でもあり、今でなければ作りにくかったところはあると思いますが、石井裕也監督自体、世の中に率直に伝えたいことはしっかりと伝わっていると思います。

登場しているシーンが少ないながらも、やはりオダギリジョーが父親役を担っていたことはとても本作にとって意味が大きかったのかと思います。

「僕たちはルールというルールに裏切られる」

やりきれないことが多く、観ていて気持ちが良い作品とは言いづらいのですが、それでも日々は続いていくのであって、良子が自宅から持ち出したものも全く理解できないわけではないことだと思います。

「おい、それについてどう思う」

終盤の夕焼けのシーンは合成っぽくわざと演出をしているような印象もありますが、これを撮影するのも大変だったのだろうなぁとは思います。夕日がしっかり照らされる時間は、実際それほど長い時間ではありませんから。

最後の演劇はちょっと意表をつかれますが、これは、息子自体が代弁してくれるので、それほど戸惑うことはありません。むしろ、とても丁寧に説明してくれて映画をまとめています。

「ルール」という一本筋の通った作品ではあり、しっかりとしたメッセージのある作品で、個人的にはおすすめしたい作品です。

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