【日本映画】「淵に立つ〔2016〕」を観ての感想・レビュー

【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】町工場を営む鈴岡利雄は、妻 鈴岡章江と娘 鈴岡蛍の3人で穏やかに生活をしていたが、古い友人の八坂草太郎が現れ、住み込みをしながら工場の仕事を手伝う様になる。八坂は過去に秘密があり、そのことで徐々に鈴岡家に不穏な空気が漂い始める。

淵に立つ

明確に描かれていないところは多いですが、しっかりと筋道とメッセージは残されており、明確な意図が隠されながら描かれている作品

監督は、映画美学校で、2004年『椅子』を長編自主映画として初監督をし、その後、2005年に主宰の劇団青年団に演出部に入団し、映画祭を青年団俳優とともに企画開催しています。『ほとりの朔子』『さようなら』とさまざまな作品で評価され、特に2016年『淵に立つ』では、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞しています。

は、オーディションに合格し、1988年『3年B組金八先生III』で俳優デビューをしています。1990年『バタアシ金魚』で映画初出演をし、映画制作の現場を見て、映画での仕事にこだわりを持ち、様々な監督作に出演しています。その後、数多くの映画に出演しており、高い評価を得ている個性派俳優です。

は、大学在学中に第三舞台の公演に感銘を受け、第三舞台に入団し、多くの作品に出演しています。2016年『淵に立つ』で、多くの映画祭で賞を受賞し、映画やドラマなど多くの作品で活躍する女優です。

・第69回カンヌ国際映画祭にて、「ある視点」部門の審査員賞を受賞しています。

・物語は、鈴岡家に居候をしながら住み込みで仕事を手伝う八坂が、とある秘密のために、一家は徐々に崩壊していく物語です。

・序盤は、鈴岡家の生活が描かれますが、無口な父親と敬虔なクリスチャンの妻との生活でちょっと異様ながらも、それほど不思議でもないようなちょっと違和感は残す感じの演出で描かれます。

・普通といえば、普通ですが、やはり何か少しだけ異様な雰囲気をもつ一家の中に突然、八坂が現れ、住み込みで仕事をするようになります。

・八坂は、過去に殺人を犯しており、出所してきたことで、昔の知人を頼って、鈴岡家に来ますが、この殺人については、詳しくは語られないながらも、本作の根底に染み付いたかのように描かれていきます。

・白シャツに黒いスラックスという服装をしており、背筋を伸ばしてキチッとしたような言動の八坂ですが、開始40分ほどで徐々に八坂の裏の部分が見えてきます。

・八坂が異様に映るところは、歩き方や言葉遣いによるところもあり、また、脇を締めていないところがあり、暗喩を込めた言動が込められています。脇を締めていないということで、なにか一物を隠し持っているというような空気感を漂わせているところでもあります。

・白いつなぎの下に来ている赤いシャツは、その暗示を示していると言っても間違いではなく、この色使いによる暗喩は本作では多くに使われています。

・娘の発表会の衣装の赤にもその意図が込められており、殉教者という暗喩があると思われます。

・主人公を誰に置くかというところは意外と難しく、登場する鈴岡家の3人と八坂というところが主人公とも言えますが、いずれも感情移入を拒むような印象があります。

・また、前半と後半では物語の雰囲気と構成も微妙な変化があり、川辺に寝そべっている4人の人物にも、対比がされています。ここにも暗喩があり、詳しくは描かれないながらも、意味合いを残すような演出がされています。

・八坂は、過去の殺人の共犯者としての利雄をゆするような形で、鈴岡家に深い闇を落として行きますが、そこにも暗喩や幻影のようなものがあり、特に、白いシーツの奥に現れる八坂には、ある種ホラー映画以上の恐怖感があります。

・オルガンを教える八坂の人物像は深く描かれないながらも、これも深読みできるところがあり、もともとは、キリスト教信者であったような描き方だったのかと思われます。

・同じく、過去の殺人自体も多くは語られないために、実際にどのように利雄が関わったのかが描かれておらず、実際には八坂は無罪だったということも匂わせる感じもします。

・というように、多くがモヤッとした設定で描かれていながらも、暗喩が込められているために、スッキリと内容が見えてくるような内容となっているために、この映画の伝えたいイメージが明確になっているような印象があります。

・難易度としては高い作品ではありますが、多少読解力は必要となり、難解な作品ではありますが、非常に良くできている作品です。

・公園から海辺と変わるところも、その淵というところでは、生と死の縁というところかもしれません。

・「淵に立つ」という題名がまさしく暗喩であり、いろいろな捉え方ができるところもあります。

・ラストシーンでは、利雄が人命救助を行っているところになりますが、最後に八坂が登場してからのシーンの繋がりが、不条理な印象もありながらも、意味深なところが多くなっています。

・「人命救助を行った順番はどういう順番だったか?」

・「なぜ、孝司も倒れていたのか?」

・このあたりを見ていくと、本作の主人公が誰であるかも、モヤッとした中で、スッと浮かび上がってくるような感じもあり、この直接的でなく、観る側に判断を委ねるところは興味深いところがあります。

・明確に描かれていないところは多いですが、しっかりと筋道とメッセージは残されており、明確な意図が隠されながら描かれている作品ではありますので、注意深く観ることで本作の主題がわかるかと思います。

・難解な作品ではありますが、良作とも言える作品ではあります。

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