【日本映画】「博士の愛した数式〔2006〕」を観ての感想・レビュー

【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】中学校の数学教師となった「ルート」が主人公。29歳のルートは、最初の授業で10歳の頃に母親が家政婦として派遣されていた先の数学者「博士」のもとで働いていた。博士は、事故により80分間しか記憶が持たないようになってしまっていたが、数学への愛情の強いひとだった。

博士の愛した数式

しっかりとした構成力で、鑑賞後の余韻を残してくれる良い作品

・小泉堯史監督は、大学卒業後、黒澤明監督の助手として務め、黒澤監督の遺稿『雨あがる』で監督デビューをしています。

・その後は、佳作ながらも、一作一作の完成度が高く、評価されている監督です。

・寺尾聰は、フォークグループ「ザ・サベージ」を結成し活躍します。1968年にグループは解散しますが、同年には映画『黒部の太陽』で俳優デビューしています。

・その後、「雨あがる」では、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞、のちの「半落ち」でも同賞を受賞をしています。なお、同賞の複数回受賞者は、前例がありません。

・深津絵里は、1986年ミス原宿グランプリで優勝し、13歳で芸能界デビューします。JRの「クリスマス・エクスプレス'88」で広く認知され、様々なTVドラマに出演し、1996年「(ハル)」で初出演します。

・物語は、事故により、80分しか記憶の維持できない博士を中心としたストーリーであり、「ルート」が数学教師となり、学期はじめの最初の授業で、その話を、数学を交えて生徒に説明をします。

・時系列が2つ存在し、「博士と家政婦の物語」と「ルートの教壇での説明」の話が交差します。

・博士自体は、記憶が80分以上持たないというところがあり、何度も話がループします。

・しかしながら、そのループの中に、「数字や数学に関する要素」を盛り込むことで、博士とコミュニケーションが成り立ちます。

・この視点の描かれ方とその際に登場した数学の知識を、現在の「ルート」の教壇で解説される構造です。

・博士自体には何も悪意がなく、記憶が維持できないがために、何度も同じことをループしてしまいます。

・いわゆる認知症という点でもありますが、温和な博士でもありますので、記憶が維持できない点で、苦悩をしてしまうようなネガティブな作品ではなく、むしろ良いところを探そうとするポジティブな面があります。

・対する「ルート」の母親も、シングルマザーとしての仕事として家政婦として博士に出会いますが、そこには、雇い主と雇われ側という一線があり、この点はしっかりと維持されているからこそ、下世話な物語とならないところがあります。

・阪神ファンでもある「博士」には、江夏の背番号「28」に愛着を持ち、その完全数である「28」の説明をしてくれます。

・その他にも、「虚数」「友愛数」と数字と生活にまつわる話をしてくれ、数学と生活の接点を見出そうとします。

・80分しか記憶が維持できないからそこ、47歳で事故に合う以前の事柄を数字をもとに説明をします。

・10歳の「ルート」が、後に数学教師となったきっかけの一つであったのだと言うのは、容易に想像できるわけです。

・その、博士を中心とした数学の魅力的な世界と、考え方を伝えてくれる映画であり、大きな物語の起伏や伏線というものはありませんが、しっかりとした構成力で、鑑賞後の余韻を残してくれる良い作品です。

博士の愛した数式

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